長期的なストレスはアトピーのかゆみを悪化させる

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仕事でうまくいかなかったり、人ともめてしまったりするなどによって、人はストレスを感じます。このストレスでアトピーが悪化することがあります。

大きなストレスを受けると、アトピーが悪化してしまうのは想像しやすいです。それでは、なぜストレスがアトピーと関係しているのでしょうか。この理由について確認していきます。

ストレスには、短期的なものと長期的なものがある

私たち人間が感じるストレスには、短期的なものと長期的なものがあります。まずは、短期的なストレスについて解説します。

私たちは目や耳の感覚を頼りに、自分の置かれた環境へ常に注意を向け続けています。たとえば、道路を進んでいるときに、通り過ぎる人や自分の視界に入った人が、敵かそうでないかを判断するため、周りの環境や情報を無意識に脳へ伝達し続けているのです。

そのため、混雑している道を通るとき、多くの人は強い疲労感を感じます。

周りの環境の情報は、大脳に送られ、そこで判断が下されます。また、脳の中心部には、「視床下部」という場所があります。この視床下部へ、大脳で判定された情報が送られます。

大脳から送られた情報をもとに、視床下部では、「どのような行動をすべきなのか」、「そのまま素通りすべきなのか」などを決定します。さらに腎臓の上部には、「副腎」という臓器があります。副腎は、皮質(副腎皮質)の部分と髄質(副腎髄質)の部分に分けられます。

視床下部で「行動するべき」と判断された場合、その情報が副腎髄質に伝達されます。それにより、副腎髄質からアドレナリンというホルモンが分泌されます。

副腎髄質からアドレナリンが放出された場合、筋肉の収縮や血圧の上昇が起こります。つまり、「いつでも取るべき行動を取れる状態」になるわけです。このとき、どのように行動するかを瞬時に判断するときのストレスが、「短期的ストレス」に分類されます。

長期的ストレスの内容とその悪影響

その一方で、自分につらいことが起こったり、逃げたくても逃げられなかったりすることなどがくり返されることでも、ストレスが蓄積していきます。このようなストレスは、「長期的ストレス」に分類されます。

たとえば、「現在の職場に不満があるけど、自分の生活があるからやめたくてもやめられない状況」などで感じるストレスが、長期的ストレスというわけです。

視床下部の下側には、「下垂体(かすいたい)」という部位があります。この下垂体の前方の部分を「下垂体前葉(かすいたいぜんよう)」といいます。

長期的ストレスの場合、この下垂体前葉の部分に、その情報が伝達されます。そして、下垂体前葉に送られた長期的ストレスの情報は、副腎の皮質(副腎皮質)に伝えられます。

これにより、副腎皮質から「コルチゾール」という物質が分泌されます。コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれます。さらに、この物質は免疫の低下に大きく関係しています。

コルチゾールの分泌によって、免疫機能が低下する

長期的なストレスによってコルチゾールが分泌された場合、その作用によって、体を守る免疫細胞の破壊が起こります。つまり、長いストレスが原因となって、免疫機能が弱くなってしまうのです。

アトピー患者の皮膚には、病気の原因となるブドウ球菌である「黄色ブドウ球菌」が存在します。免疫機能が低下すれば、黄色ブドウ球菌の数が増えます。それによってアトピーが悪化し、強いかゆみが起こってしまいます。

また、皮膚の表面に近い部分の層を、「表皮」といいます。そして、表皮の奥にある層を「真皮」といいます。真皮の内部には、「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」という細胞があります。こうした表皮細胞や線維芽細胞でも、コルチゾールの分泌が行われます。

さらに、肝臓からもコルチゾールの放出が起こります。分泌されたコルチゾールは、血流に乗って体中に運ばれます。そしてこのとき、皮膚の表面にもコルチゾールが送り込まれます。

これにより、表皮細胞などの「コルチゾールの生成・分泌が行われる場所」では、コルチゾールの濃度が大きく上昇します。つまり、皮膚に存在するコルチゾールの量は非常に多くなります。

要するに、仕事や学校などの「逃げたくても逃げられない状況」で生じた長期的ストレスが原因となって、皮膚の表面で、かゆみを起こすコルチゾールを大量生産させてしまうわけです。

コルチゾールが皮膚で数多く生成されるようになると、さらに免疫細胞の破壊が加速します。それにより、アトピー患者の皮膚表面に存在する黄色ブドウ球菌が活発に増殖するようになります。その結果、さらにかゆみがひどくなってしまうのです。

それに加えて、免疫細胞が正しく働けなくなり、免疫に関係する細胞である「マスト細胞(肥満細胞)」が壊されてしまいます。マスト細胞のなかには、化学物質である「ヒスタミン」などが含まれています。マスト細胞が壊されることで、その中に含まれるヒスタミンなどが一気に飛び散ります。それにより、非常に強いかゆみが発生してしまいます。

このときに皮膚を掻いてしまうと、皮膚が傷だらけになります。その結果、アトピーの症状がさらにひどくなってしまうのです。

長期的ストレスの悪影響を減らし、アトピーを改善させる

これまで述べたように、つらくても逃げられない環境で起こる長期的ストレスは、アトピーを悪化させる原因になります。長期的ストレスによってアトピーを悪化させないためには、普段からストレスを溜め過ぎないようにすることが大切です。

長期的ストレスの対処法としては、「自分が夢中になれる趣味をもつ」のほか、「つらい経験を、いつまでも引きずらない」といった心構えなどがあげられます。そして、ストレスを長期間感じることが多い人は、これらの対処法を実行してみてください。

そうすることで、長期的ストレスによるアトピーの悪化を防ぐことができます。さらに、ストレスが減ることによって、普段の生活が活気に満ちあふれてくるでしょう。