厳格な血糖値のコントロールは死亡率を高くする

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糖尿病では血糖値が異常に高くなってしまいます。糖は栄養素として必要不可欠ですが、その量が多くなると毒性を発揮するようになります。糖尿病によって腎臓や網膜、神経の働きが弱ってくることにより、さまざまな障害を生じるようになるのです。

そこで、糖尿病による合併症を防ぐために血糖値を下げようとします。ただ、糖尿病患者が血糖値を低下させるときは「ほどほど」を意識しなければいけません。厳格に血糖値を下げようとすると、かえって死亡率を高めてしまうからです。

厳格な血糖コントロールのリスク

従来、糖尿病の分野では「血糖値は下げるほど良い」とされていました。理論的に考えれば、血糖値が低いほど糖による毒性を生じないため、合併症を予防できるからです。

そこで、米国国立衛生研究所(NIH)の傘下にある組織が主導となって、2型糖尿病患者1万人に対して試験を行いました。この研究をACCORD試験といいます。このときは、

・厳格に血糖コントロールを行う
・通常の血糖コントロールを行う

の2つ分けて実施します。血糖値はHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という指標を用いて行われます。HbA1cは1~2ヶ月の血糖値がどのように変動したかをみることができ、HbA1cが6.5%以上であれば糖尿病と診断されます。HbA1c6.2%未満であれば正常値です。

そこで、「厳格な血糖コントロール群」はHbA1cを6.0%未満、「通常の血糖コントロール群」ではHbA1cの目標を7.0~7.9%に設定して試験を行いました。

当初、「厳格に血糖コントロールを行った群の方が心筋梗塞や脳卒中などのリスクが少なくなり、死亡率を低くすることができる」ことを研究しようとしました。しかし結果は逆となり、厳格に血糖コントロールした方が総死亡率が22%も増加していました。

この結果を受け、当初は5年間の追跡調査だった試験は3年半の時点で中止となりました。このとき、「厳格な血糖コントロール群」ではHbA1cの値は平均6.4%であり、「通常の血糖コントロール群」ではHbA1cが平均7.5%でした。

厳格な血糖コントロールが死亡率を上げる理由

なぜこのような現象が起こったのかというと、厳格に血糖値をコントロールすることで重症低血糖が高頻度で起こっていたことが分かりました。

血糖値が高いのは問題ですが、薬の副作用によって低くなり過ぎると低血糖という重篤な副作用が表れます。手足のふるえや寒気などが起こり、より症状が重くなると昏睡状態に陥ることがあります。こうした重症例の低血糖が頻発していたのです。

こうした重症低血糖により、心筋梗塞や脳卒中などが誘発され、総死亡率が上昇した可能性があります。高血糖状態による合併症は問題であるものの、低血糖に陥ることによる症状はさらに深刻でした。

このように、何でもかんでも数値に着目して厳格にコントロールするのは得策ではありません。患者さんの状態を見るのではなく、血糖値だけを良くしようとすると死亡率を高めてしまうのです。

もちろん、血糖値が高すぎるのは問題です。食事や運動の内容を改善し、場合によっては薬を使用しなければいけません。「薬を飲むな」と言っているのではなく、その使い方が重要になります。

何事も「ほどほど」が重要です。数値だけを見て厳格に糖尿病を治療しようとするよりも、体調に合わせて徐々に改善していく方が適切であるといえます。

こうした情報を知ったとき、重要なのは「自己判断で薬を中止する」「医師の治療計画を無視する」などを行ってはいけないことです。下手に素人判断で行うと寿命を縮めるため、「医師や薬剤師などの専門家と相談する」ことが正しい選択だといえます。