筋トレで筋力がつかない「見せかけの筋力低下」と背骨の関係

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転倒を予防するために、筋力の維持や増強が必要なことは一般的に知られています。実際、私も筋力低下は転倒の大きな要因になると考えています。そして、多くの方がそれに対して筋力を増強させるような運動を行なっています。

理由は何であれ、いわゆる「筋トレ」というものをしている方は多いです。しかし、思った通りに筋力がついてきている方は少ないのではないでしょうか。その原因は、「見せかけの筋力低下」にあるのかもしれません。今回、「筋トレで上手く筋力がつかない原因」について説明します。

まず、人の筋力(実際に発揮される力)というものはその人の筋肉量と相関します。つまり、基本的には筋肉量があるほど筋力は強いということになります。しかし、身体に何かしらの問題があると、この筋肉量と筋力に差が出てきてしまうのです。

身体に問題がない状態では、筋肉量が100の時は、筋力が100あると仮定します。しかし、身体に問題が出てしまうと、筋肉量が100あっても、実際に発揮される筋力が70しか出ないという状態になってしまうのです。

このような「身体に問題がある状態」とはどういう状態なのかを説明します。

筋力は背骨にも依存している

物理の法則で「作用反作用」という法則があります。これは、ある物体に作用する力A(作用力)は、作用した物にAと同じだけの力(反作用力)が返ってくるというものです。

例えば、壁を手で押したときを想像してみてください。手から壁にAの力が伝わります。そして、手にはその力と同等の力A’が返ってくるので、その反作用力A’に対抗するために足で踏んばる必要が出てきます。

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つまり、何かしらの力を発揮した場合は、身体に同じ強さの力が返ってくるということです。これは重力環境下である地球ではほとんどの現象に当てはまります。

そして、ここで考えなくてはいけないことは、「身体に返ってくる反作用の力はどこで消えるのか」ということです。

その役割を主に担うのが「背骨」になります。「背骨」はS字の湾曲を作ることにより、この反作用をバネのように吸収します。この背骨のS字湾曲により、多くの反作用力が吸収されているのです。

そして、人の体とは良くできているもので、「背骨で吸収できない力」よりも大きな力を出せない作りになっています。なぜならば、体の能力を越えた力を出してしまうと、どこかに過剰な負担がかかり、壊れてします可能性があるからです。

背骨の湾曲が筋力に関係する

人が実際発揮する筋力というものは「筋肉量」だけでなく、反作用の吸収能力「背骨の湾曲」にも依存するのです。

つまり、筋肉量が100あっても、背骨の反作用を吸収する力が70しかない場合は、実際発揮される力は70ということになります。

これが「見せかけの筋力低下」ということになります。「見せかけの筋力低下」がある人に必要なことは「筋トレ」ではなく、「背骨のS字湾曲の回復」ということになります。

ちなみに、人間の体は身体に問題がない状態でも「見せかけの筋力低下」が起こっています。これはよく知られている「火事場の馬鹿力」という現象の説明になります。

この現象は「心理的限界」といって、普段の生活では自然と持っている力の70%程度しか使っていないと言われています。この状態で「大声を出す」などの行為を行うと、この「心理的限界」が解除され、100%の力が発揮されることになります。

今回、説明した背骨の問題による「見せかけの筋力低下」は、この「心理的限界」からさらに抑制された状態を表しています。背骨の湾曲が低下している状態では、本来もっている力の50%程度しか発揮できていないということになります。