長引く痛み(慢性疼痛)には情動や認知などが影響している

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痛みは不快なものであり、痛みを感じる人の多くはその生活になんらかの悪影響を及ぼしています。通常の痛みは体を守るために発せられる警戒信号であり、体が壊れないために必要なものです。

一方、警戒信号とは違い、とくに体に必要でもないのに続く痛みがあります。これは慢性痛といわれ、多くの人が悩まされています。今回はこの慢性疼痛について解説します。

慢性疼痛の特徴

従来、痛みはその持続時間によって急性痛と慢性痛に分類されていました。しかし現在では、科学の発展に伴って両者の病態や発生メカニズムが全く異なることがわかり、痛みは決して時間的経過によって分類・定義されるものではないという認識が一般的です。

慢性疼痛は、骨折や火傷などで「骨がついている」「傷が瘢痕化している」にもかかわらず、「いつまでも痛みが続く」「気温の変化や体温の上昇など身体内外の変化によって痛みが変化する」などの特徴があります。

これらには、脳を含む神経の異常が関与することがわかっています。神経の異常とは、「痛みを感じる神経自体が興奮しやすくなっている」「逆に痛みを抑制する神経は働かなくなっている」「通常では連絡していないところと連絡している」などの状態が挙げられます。

具体的には、痛みを伝える末梢神経や情動に関係する前帯状回・島皮質とよばれる領域は興奮しやすくなっており、痛みを抑制する前頭前野とよばれる領域は働きが低下しています。前帯状回は社会的疎外や心理的な痛みによっても活性化します。

つまり、神経が異常になると通常より痛みを感じやすく、心理的な影響も受けやすくなっていると考えてください。

また、通常では温度刺激や触覚などは痛み刺激として認識されません。しかし慢性疼痛患者では、これらの「痛みに関係しない感覚情報」と「痛みの情報を伝える回路」が混線してしまい、通常では痛みを感じない温度刺激や触刺激でも痛みを感じてしまうのです。

以上のようなメカニズムによって、ストレスや緊張するだけで痛みが悪化したり、触るだけで痛みを感じたりするなど、痛みに取りつかれた「痛み病」とよぶべき状態になってしまうのです。

慢性疼痛患者の治療

通常の痛みは、組織損傷を起こしている刺激を取り除くことによってなくなります。骨折した後に、一定期間固定を行うと治癒するのはその代表例です。

しかし、慢性疼痛の場合はそう簡単にはいきません。このような場合は、組織損傷の程度とは関係なく痛みが起こります。つまり、組織が治癒しても痛み続けるため、その刺激を取り除いても疼痛は残るのです。

先ほども述べたように、慢性疼痛には情動(感情)が大きく関係します。また情動だけでなく、痛みに対する認識も変化しています。例えば、「自分は一生痛みと付き合っていかなければならない」「この痛みは一生治らない」などの痛みに対する極端な思考が働きます。このような思考は脳に影響し、さらに痛みを強くするだけでなく治りにくくします。

そのため、慢性疼痛患者は身体的な治療だけでなく、精神的な治療も行う必要があります。慢性疼痛がある人は、通常の整形外科だけの治療では治らないことがほとんどです。

整形外科に長年通っている人は、もしかしたら以上のようなことが体の中で起こっているのかもしれません。このような場合は、整形外科や精神科などが協力してくれる病院で治療を受けることが必要です。

まだこのような病院は少ないですが、探せば必ず見つかります。上記のような症状がある方は一度検索してみてください。