背骨の柔らかさが転倒予防・防止に繋がる

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転倒の予防に下肢の筋力が重要であるということは、一般的に言われていることであり、私もその通りだと考えています。

では、体の柔らかさも転倒の予防に大きく関与していることを知っているでしょうか。実は、筋力の低下より体の柔軟性の低下の方が、より転倒に関係しているのです。今回はそのことについて説明したいと思います。

寝たきりの原因の多くは転倒

現在、寝たきりの原因のうち10%程度が骨折と外傷であり、その多くが転倒によるものといわれています。つまり、転倒を予防することは寝たきり防止に繋がります。

人は1週間全く動かずに横になっているだけで、10~15%の筋力低下が起こるといわれています。よって、転倒を予防することは、将来の筋力低下の防止にも繋がるのです。

加齢により歩行能力が大きく低下し、歩けなることはほとんどありません。実際、歩行器や車椅子が必要になる人の多くは、転倒後の寝たきり状態の影響による場合が多いです。

以上のことからも、転倒を予防する意義が大きいことはわかるかと思います。そこで、体の柔らかさと転倒予防の関係について説明します。

力を出すには身体の柔軟性が必要

まず、物理の法則に「作用反作用の法則」というものがあります。これは簡単に言うと、物体Aにより物体Bに作用する力C(作用)は、物体AにCと同じ力だけ跳ね返る(反作用)というものです。さらにわかりやすくするために、実際の人間で例を挙げます。

歩いている時、地面に足がつきます。この時、自分の体重分の力が地面に伝わっています(作用力)。そして、実はその力と同じ分だけの力が足から体に対して跳ね返ってきているのです(反作用力)。重力のある地球では、ほとんどの場合にこの法則が適応されます。

そして、人間にこの法則を当てはめるときに考えなくてはならないことがあります。それは、「足から体にかかる反作用力は、どこで打ち消されるのか」ということです。

力が加わっているということは、どこかでそれを吸収しているものがあるはずです。人間ではその役割の大半を担っているのが背骨になります。背骨はS字の湾曲を作ることにより、バネのように効率良く力を吸収します。

また、この衝撃吸収というのは、冒頭で述べたように筋力にも関わってきます。

人は自分の体が壊れないように多くのことを調整しています。血糖値が高くなれば、血糖値を下げるようなホルモンが出るなど、自然と調整するようになっているのです。

同じことは、筋力を発揮する時にも起こっています。背骨による衝撃の吸収能力が落ちてしまった場合、その分だけ反作用分の力の吸収を行えないようになります。

そして吸収しきれなかった力は、どこか他の関節への過剰な負担となり痛みを誘発します。人の体はこれを事前に防ぐため、衝撃吸収能力が落ちた分だけ、発揮する力も落としてしまします。これは体が自分自身を守るための防御機能です。

ここまでをまとめると、以下のようになります。

・人の体には作用反作用の法則が適応される

・体は自分自身を守るために、吸収できる反作用力以上の作用力(筋力)は発揮しない

・反作用力を吸収できる主な場所は背骨である

つまり、背骨が固くなると自然と筋力を発揮しづらくなるのです。そして、筋力が発揮しづらいということは転倒に繋がります。これは、筋肉がないのではなく、筋力を発揮出来ていない状態となります。

そのため、いくら筋肉トレーニングを行っても筋力の発揮にはつながらず、転倒予防にも繋がらないということが起こります。このような場合、背骨の柔らかさを回復させることが筋力の発揮につながり、そして転倒予防になるのです。