風邪に抗菌薬など、むやみに抗生物質を使用すべきでない

406bef4a39cd012cc2f82d0900de6559_s

日本人は医療が大好きな民族であるといえます。ちょっとした風邪で病院やクリニックを受診し、薬をもらおうとする人が多いです。このときは抗生物質を欲しがる人が大半です。

ただ、風邪に抗菌薬(抗生物質)は効きません。むしろ副作用の危険性があり、「抗生物質が効果を示さない体」へと変わってしまう恐れがあります。そのため、むやみに抗菌薬を使用するべきではないのです。

風邪に抗菌薬が効かない理由

医療知識のある人であるほど、風邪薬を積極的に飲もうとはしません。医療関係者の間では、風邪薬は風邪を治さないことが常識だからです。

風邪はウイルスによって起こります。このときの原因ウイルスはライノウイルスやアデノウイルス、コロナウイルスなど多種多様です。ライノウイルスだけでも100以上の亜種が存在するため、風邪はあらゆるウイルスによって生じる可能性があるのです。

ただ、「あらゆるウイルスに効果を示す薬」は存在しません。インフルエンザやヘルペスウイルスなど、特定のウイルスだけ効果を有する医薬品はあるものの、風邪のように多種多様なウイルスを殺す薬はないのです。

そのため、風邪に対して抗菌薬を使用してもまったく効果がありません。それどころか、副作用のリスクがあるのでマイナスの作用にしかなりません。

例えば、抗菌薬を使用すれば腸内細菌が死滅します。これによって腸内細菌の分布が乱れてしまい、下痢を生じることがあります。薬である以上は必ず副作用を生じることを理解しなければいけません。そのため、風邪で抗生物質を出す医師がいれば、完全なるヤブ医者であるといえます。

もちろん、肺炎や中耳炎など、細菌感染症に対しては抗菌薬が効果を示します。このような場合は有効ですが、現在は風邪にも抗生物質を使用するケースがたくさんあり、無意味な処方が多すぎるといえます。

抗生物質を使いすぎると、抗生物質が効きにくくなる

抗菌薬を多く使うのは、単に副作用リスクがあるという問題だけではありません。体内の細菌が進化してしまい、将来は抗生物質が効かない体になってしまう恐れがあります。

現在では、抗菌薬が効かない「耐性菌」が問題になっています。耐性菌とは、抗菌薬に対して耐性を獲得している細菌のことを指します。耐性があるため、抗生物質を投与しても感染症から回復するのは難しいです。

耐性菌は抗菌薬を使用する機会が多いほど出現しやすくなります。そういう意味では、風邪に抗菌薬を使用するのは「病気がまったく改善しない」「副作用リスクがある」「耐性菌出現の恐れ」など、メリットが一つもありません。

また、耐性菌による感染が問題になり過ぎているため、現在は「できるだけ抗菌薬の使用を制限し、耐性菌を出現させないようにする」という対策が行われています。

抗生物質を欲しがってはいけない

医師・薬剤師であれば、上記のことは常識の一つです。しかしながら、どれだけ説明しても抗生物質を欲しがる患者さんがいるのも問題であるといえます。「風邪を引いたから、何としても抗生物質を処方してほしい」と患者側が訴えかけるのです。

昔とは違い、今は医療がサービス業のような形態になっています。そのため、むやみに患者さんからの訴えをさえぎり、強引に「抗生物質は出しません」と突っぱねることはできません。

そこで丁寧な説明を試みるものの、「抗菌薬によって風邪が改善する」という思い込みから耳を貸さない人が多いです。その結果、医療従事者側が根負けして、無意味な抗菌薬を処方してしまうという現実もあります。

医療を受けるとき、患者側も正しい知識をつけなければいけません。思い込みを排除し、医療の専門家を有効活用するように心がける必要があります。

なお、ウイルスを原因とする風邪に対して抗菌薬は効きませんが、前述の通り細菌感染症には抗菌薬が有効です。詳しい説明は省きますが、ウイルスと細菌は別物であると考えてください。

肺炎や中耳炎などは細菌が原因です。この場合は抗菌薬が大きな効果を発揮します。ただ、素人では「ウイルス感染症と細菌感染症」の判断難しいため、医師に相談するときは「単なる風邪であれば抗生物質はいりません」と言うようにしましょう。