抗生物質を使いすぎると、薬が効かなくなる

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多くの人は「薬は病気を治すもの」と考えます。ただ、薬は病気を治すものではありません。例えば、風邪薬は熱や咳を無理やりおさえつけるだけであり、風邪を引き起こしているウイルスを殺すことはできません。また、頭痛薬は「痛みを感じなくさせる作用」だけであり、痛みの根本原因を取り除くことはできません。

ただ、例外として抗生物質(抗菌薬)は根本的に病気を治療することができます。ただ、抗生物質をむやみに使うと、将来薬によって感染症を治療できなくなる可能性があります。この理由について解説していきます。

薬は病気を治すものではない

薬は症状の緩和が目的であり、病気を治療することはできないのです。それどころか、薬は病気を悪化させることすらあります。風邪薬は免疫機能を抑えるため、風邪を長引かせてしまいます。これは、医療関係者であれば誰もが知っている常識です。

さらに、頭痛薬は使いすぎると、さらに頭痛を悪くしてしまいます。薬によって頭痛が悪化してしまうことを、薬物乱用頭痛といいます。

同じことは生活習慣病の薬でも同様です。高血圧の薬、コレステロールの薬、糖尿病の薬など、これらは一生飲み続けるように指導されます。それでは、なぜずっと飲まないといけないのでしょうか。

この理由は単純であり、薬が病気を治さないからです。あくまでも症状を一時的に抑える作用であるため、常に薬を飲み続けなければいけません。

もちろん、これは骨粗しょう症の薬やパーキンソン病の薬など、あらゆる薬に共通します。認知症など、そもそも病気を治さない薬が存在する分野もあります。

ただ、中には例外があります。それは、前述の通り抗生物質が当てはまります。抗生物質に関しては、珍しく病気を根本的に治療できます。

例えば、肺炎は細菌によって起こります。「細菌」によって病気を生じていることから、この場合は「細菌」が明らかな原因であると分かります。そこで肺炎患者に抗生物質を使用すると、細菌という根本原因に働きかけてくれます。その結果、病気が治癒していきます。

抗生物質を使うと、薬が効かなくなる

それでは、抗生物質が病気を根本的に治療するからといって、何も考えずに薬を使用しても問題ないのでしょうか。もちろん、そうではありません。

まず、抗生物質には副作用があります。抗生物質が病気を患っている組織だけに作用すればいいですが、現実的に難しいです。例えば肺炎を治療しようとして薬を投与したとき、抗生物質は肺以外にも腸や肝臓などあらゆる組織に分布し、ランダムに作用します。

このとき、腸には無数の細菌が生息していますが、抗生物質は腸内細菌を死滅させてしまいます。その結果、下痢を引き起こします。

また、「体にとって良い働きをする細菌」を殺すことで、結果として「体に悪い作用をする細菌」の増殖が優勢になることがあります。この現象を専門用語で菌交代症と呼びます。菌交代症によって細菌が毒素を作るようになると、大腸に炎症が起こります。偽膜性大腸炎という疾患は、このようなメカニズムによって生じます。

それだけではありません。抗生物質を使っていると、細菌は抗生物質に対して耐性をもつようになります。つまり、薬を投与したとしても感染症から回復しなくなるのです。このような菌を耐性菌と呼び、世界中で耐性菌の蔓延が問題になっています。

感染症が疑われるとき、抗生物質は病気から立ち直るために重要なアイテムだといえます。ただ、やみくもに薬を使っていると、感染症から立ち直れない体になってしまい、いざというときに打ち手がなくなってしまいます。

そういう意味では、風邪などで抗生物質を使っている場合ではないのです。風邪はウイルスによるものなので抗生物質が効かないだけでなく、本当に細菌による感染症が起こったときに何も対処できなくなります。薬は本当に必要なときだけ使用する必要があります。