お薬手帳の役割、意義、活用方法

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調剤薬局で薬をもらうとき、「お薬手帳はありますか?」と聞かれたことがあると思います。お薬手帳とは、自分が使っている薬の名前や一回分の用量、日数、服用方法などのあらゆる情報が記載された手帳を指します。

人によっては副作用歴やアレルギー歴、普段飲んでいるサプリメントなどの情報が記載されていることもあります。処方せんを持って薬局に行く時、この手帳を提出します。それでは、お薬手帳にはどのような意味があるのでしょうか。今回、その意義と役割について確認していきます。

お薬手帳の活用方法

使用するお薬手帳を一冊に決めておくことで、「過去に受診した時の履歴」や「他の医療機関を受診した時の処方内容」を確認することができます。これによって、他の医療機関まで含めた飲み合わせや副作用の有無なども含めてチェックすることが可能になります。

また、新しく医療機関にかかる時であっても、お薬手帳を見せれば普段使用している薬を知らせることができます。

例えば、血液の流れを改善させたり、血栓の生成を防止したりする薬があります。この薬を服用している時は血液が固まりにくくなるため、手術を行う前は服用を中止することがあります。この時、患者さんが服用している薬を正確に覚えていなくても、お薬手帳を見れば飲んでいる薬を確認して適切な処置を行うことができます。

もともと、お薬手帳は一部の医療機関や調剤薬局がサービスで行っていた制度でした。しかし、お薬手帳による情報提供などの効果が期待され、2000年には制度化されて現在ではすべての調剤薬局でお薬手帳を活用するようになっています。

緊急時に命を救う手帳

お薬手帳が本当の意味で見直された実例に、2011年3月11日に発生した東日本大震災後の混乱があります。震災後、津波や原発の影響によって住む場所を追われた多くの人が、普段服用している薬を求めて医療機関に殺到するという事態が起きました。

この時は特例措置として、被災者に限って「処方せんなし調剤」が可能となりました。通常、処方せんがなければ薬剤師は調剤を行うことができません。しかし、震災時では医師の処方せんがなくても、薬を渡せることができるような措置が取られたのです。

しかし、「心臓の薬」や「コレステロールの薬」、「痛み止めの薬」など、大まかな薬を知っていたとしても具体的な薬の名前まで正確に覚えている人はまれです。

患者さんから得られる情報といっても、「白い錠剤を夕食後に2錠飲んでいた」、「糖尿病と高血圧の薬を服用していた」くらいの曖昧なものです。これでは、いくら薬の専門家であっても対応することは容易ではありません。

このように、初めての患者さんに対して、患者さんから発せられる言葉だけで必要な薬を選び出すのは至難のわざです。

しかし、お薬手帳を持っていれば過去の服用歴をすべて把握でき、その人がどのような病気を患っているかまで、薬からすぐに判断することができます。

そのため、その場で薬を調剤することができ、まったく同じではないとしても、代わりとなる薬を渡すことが可能です。医師に対しても、情報のフィードバックがスムースに行えます。

すなわち、お薬手帳を持っていたことで、これまで通りの治療を継続することが可能になった人がたくさんいました。「処方せんなし調剤」が活かされたのは、お薬手帳の存在が大きいのです。

もちろん、手帳が津波とともに流されてしまったという方も大勢いらしたでしょう。しかし、中には急いで持ち出したバッグの中にお薬手帳が入っていて、これによっていつも通りの薬をもらうことができた人もまた大勢いたのです。

電子化が進む世の中で、「手帳」というアナログな媒体であったことも攻を奏しました。手帳であれば、停電など電力のない状況であってもそれに左右されることなく活用することができます。特に震災後ではインフラの整備が不十分であったため、手帳の方が好都合でした。

災害時では、対応する医療チームが変わってしまうことが頻繁に起こります。たとえそのような時であっても、お薬手帳に調剤した薬や日数、そして注意事項などの必要な事柄が書き込まれていれば、それまでに受けた医療内容や患者さんの状況を把握できます。つまり、お薬手帳が簡単なカルテ代わりになるというわけです。

お薬手帳にできるだけ情報を詰め込む

普段は煩わしく思っている人も多いお薬手帳ですが、このように、災害時の医療では大きな役割を果たします。お薬手帳は緊急時にあなたを守ってくれるツールになることを忘れてはいけません。

お薬手帳を活用するときのポイントは、一冊にまとめておくことです。そこに副作用歴やアレルギー歴、持病などを記載しておけば、お薬手帳を見せるだけで過去の診察や処方歴を相手に知らせることができます。

災害時に限った話ではありません。出張や旅行に携帯しておくことも重要です。外出先で病気を発症したり事故にあったりしたとき、お薬手帳を見せるだけで医療機関は多くの情報を取り出すことができます。

一般的に、お薬手帳の意義について語られる機会は多くはありませんが、このように、実は健康を守るために重要な意味をもっているのです。