妊娠中でのアルコール摂取の危険性:胎児性アルコール症候群

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妊娠中にアルコールを摂取してはいけないということは、現在では常識になっています。日本で製造されているアルコール飲料には、アルコール摂取の胎児への影響についての注意が記載されているほどです。

一昔前は、妊婦も「多く飲まなければ大丈夫」といわれていました。現在でも、高齢の方や一部の病院で「妊婦の飲酒は少量なら大丈夫」という人がいます。

しかし実際、妊娠時のアルコール摂取は胎児に悪影響を及ぼす可能性があることがわかっています。そこで、ここでは妊娠中におけるアルコール摂取の危険性と、胎児への具体的な影響について述べていきます。

妊娠中のアルコール摂取と胎児性アルコール症候群

妊婦が飲酒すると、胎盤を通して胎児にアルコールが送られます。摂取したアルコールは、肝臓での代謝によって無毒な物質に分解されます。ただ、胎児の肝臓は未熟なため、アルコールの分解がうまくできません。そのため、身体に長くアルコールがとどまり、胎児に悪影響を与えることがあります。

母体のアルコール摂取によって、出生した子供に起こった先天的な病気のことを「胎児性アルコール症候群」といいます。胎児性アルコール症候群の症状は3つに大別できます。以下に、具体的な症状を挙げていきます。

胎児性アルコール症候群の症状:発育障害

妊娠中にアルコールを摂取すると、胎児の発育が悪くなることがあります。そのため、低出生体重児になることがあります。低出生体重児とは、出生時の体重が2500g未満の子供のことをいいます。

低出生体重児として生まれると、医療機関のサポートが必要になることがあります。また、胎児性アルコール症候群が起こると、胎児期だけではなく出生後も発育が遅くなる傾向があります。

胎児性アルコール症候群の症状:脳の障害

妊娠中のアルコール摂取は、胎児の脳の発達を阻害することがわかっています。そのため胎児性アルコール症候群が起こると、知的障害や学習障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)などを生じる可能性があります。

また、胎児の脳形成が阻害されることによって、小脳の形成が完全ではない「小脳低形成」になることもあります。小脳は、運動機能の調整を行っています。そのため、重度の障害が起こると歩行困難になることがあります。

胎児性アルコール症候群の症状:特徴的な顔貌

胎児性アルコール症候群が起こると、顔立ちが特徴的になります。代表的なのは、眼瞼裂(がんけんれつ)が短い、人中(じんちゅう)が浅いなどです。

眼瞼裂とは、目の切れめのことです。眼瞼裂が短いと、目の横幅が狭くなります。そのため、黒目部分しか見えなかったり、目が小さく見えたりします。人中とは、鼻と口の間にあるくぼみのことです。人中が無かったり浅かったりすると、鼻の下のでこぼこがなくなり、たいらになります。

アルコールの分解と体質

前述のように、妊娠中の飲酒は胎児性アルコール症候群が起こるリスクを高めます。欧米では、「一日ビール一杯程度のアルコール量は胎児性アルコール症候群の危険性がない」といわれています。ただ、医学的に妊娠中の安全な飲酒量はわかっていません。また、欧米人と日本人では、体格や体質が違うため、前述の基準は適応できないといえます。

日本人の約7%はアルコールを全く分解できない体質だといわれています。アルコールが全く分解できない体質の人は、一杯のアルコール飲料で命を落とす危険性があります。

両親がアルコールに強い体質だからといって、胎児が必ずしもアルコールに強い体質だとは限りません。

アルコールの分解に関する遺伝子は、「アルコールをすぐに分解できる」「分解が遅い」「全く分解できない」の3つに大別できます。これらの遺伝子では、アルコールを分解できる遺伝子が優性です。そのため、アルコールを分解できない遺伝子を持っていても、分解できる遺伝子も持っていればアルコールに強い体質になります。

胎児は、母親と父親からアルコールの分解に関わる遺伝子を1つずつもらいます。このとき、両親からアルコールを分解できない遺伝子を1つずつもらうと、アルコールの分解ができない体質になります。

前述のように、胎児は母体よりもアルコールに弱いです。それに加えて、胎児がアルコールを分解できない体質である可能性があります。

そのため母体が摂取したアルコール量が少なくても、胎児性アルコール症候群を起こしたり、胎児が命を落としたりする危険性があります。「妊娠中に飲んでも大丈夫なアルコール飲料の量」というのはないのです。

ただ、妊娠中にアルコールを摂取しなければ、胎児性アルコール症候群のリスクは全くありません。そのため、妊娠中はアルコールの摂取を完全にやめるべきだといえます。妊娠を考えている人は、妊娠時に禁酒できるように、日々のアルコール摂取を控えるようにするのが賢明です。