母乳・人工乳の違いと、育児で人工乳に頼ることの弊害

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母親であれば、「我が子に母乳を与えたい」と思うのは当然だと思います。母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養バランスになっており、さらに免疫物質も含まれていると産院で必ず言われます。

しかし、人間の身体というのはデリケートなので、子供を産めば必ず母乳が出るという単純なものではありません。母親の8割が「母乳について悩んだことがある」というくらい、これは難しい問題です。

母乳を分泌するためには吸啜(きゅうてつ:強く吸うこと)による刺激が必要です。おっぱいに赤ちゃんが吸う刺激が加わることで母乳分泌ホルモン(プロラクチンやオキシトシン)が分泌され、母乳が分泌されます。

しかし、吸啜刺激があっても、産後の貧血や、水分・栄養の不足、ストレスで母乳が分泌されにくくなります。また、乳腺が未発達で母乳が分泌されにくい体質の方もいます。さらにいえば、産後すぐに復職した母親は吸啜刺激が定期的に起こらないため、母乳の分泌が止まりやすいです。

人工乳による育児のデメリット

そのような際の代替品として、人工乳があります。ただ、人工乳のデメリットから使用をためらう方は多いです。では、人工乳の健康面でのデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

・免疫成分の不足

母乳には免疫グロブリン(抗体)などの免疫成分が含まれていますが、人工乳には含まれていません。特に初乳と言われる「分娩後3日までの母乳」には免疫成分が高濃度で含まれており、未熟な赤ちゃんを感染症から守る働きがあります。

・母体の回復が遅れる

母乳を分泌させるオキシトシンは子宮収縮促進作用があります。オキシトシンは産後に大きくなった子宮を元の大きさに戻していきます。人工乳で育てるとオキシトシンが分泌されないため、母乳で育てている人に比べ、子宮の戻りが遅いです。

・乳幼児突然死症候群(SIDS)

それまで元気だった赤ちゃんが、なんの予兆も無しに眠っている間に亡くなってしまうことを「乳幼児突然死症候群(SIDS)」といいます。「症候群」とは、原因の分からない共通の症状につけられる総称であり、SIDSも原因は今のところ解明されていません。

厚生労働省はSIDS予防策として「うつぶせ寝を避ける」「タバコをやめる」「できるだけ母乳で育てる」の3点を掲げています。

母乳児より人工乳児でSIDS発症率が高い理由は、「免疫物質の不足のため」といわれています。また、人工乳は母乳を与える時より肌のふれあいが少ないことがあり、赤ちゃんの体温の変化に気づきにくいためともいわれています。

しかしながら、多くの団体と厚生労働省は「人工乳がSIDSを引き起こす直接的な原因ではない」としています。したがって、人工乳はSIDSの直接的なデメリットとはいえません。

母乳をネット購入するリスク

人工乳を避けるために、母乳を購入しようとする人がいます。例えば、インターネットサイトやSNSで母乳を買うことができます。しかし、誰がどのような環境で搾乳し、どのように管理されているかが全く不透明です。

体温は多くの細菌が繁殖しやすい温度です。搾乳後すぐの冷凍保存を怠ると、もともと母乳に含まれていた細菌がタンパク質をエサに繁殖していきます。

また、白血病、AIDSのように、母乳を介して母子感染する病気もあります。たとえ新鮮な母乳だとしても、ネットで母乳を購入して赤ちゃんに与えることには高いリスクが伴います。

このような不衛生、かつ高リスクな「母乳」より、徹底した衛生管理のもとに作られている「粉ミルク」の方が安全であることは言うまでもありません。栄養成分も、現在の粉ミルクは理想的な母乳の栄養成分とほぼ変わりません。

「母乳をあげなければならない」という強迫観念にとらわれてしまうと、心が病んでしまいます。母の心が病むことは子のためにならず、本末転倒です。病んでしまう前に、思い切って人工乳に切り替えることもひとつの手であるといえます。