良質な母乳のための食事:脂質の重要性

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人間は、生まれてすぐに食べることはできません。生後1年くらいまでの子どもは「乳児」と呼ばれ、主な栄養源は母乳や人工乳です。そのため、乳児期の成長のためには母乳・人工乳の質が大切といえます。

現在の人工乳は、栄養価が理想的な母乳に近づいているため、乳児が栄養不足になる心配はありません。ただ、母乳は母体の摂取した栄養素で質が決まります。母体の食事が偏ることによって、母乳の質が悪くなることがあります。

特に、現代の食生活では脂質の質が悪くなりやすいです。脂質は母乳の主成分であり、乳児が最も必要としている成分です。そこで、ここでは脂質の働きと乳児への影響について述べていきます。

母乳の質と脂質の関係性

脂質とは、水に溶けずにエタノールなどの有機溶媒に溶ける物質のことをいいます。炭水化物やタンパク質のもつエネルギー量は1gあたり4kcalであるのに対して、脂質は1gあたり9kcalです。そのため、脂質は身体にとって効率のいいエネルギー源といえます。

また、脂質は細胞膜の構成成分であるとともに、さまざまなホルモンの材料となります。また、ビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンの吸収を高める働きもあります。このように、脂質はエネルギー源であるだけではなく、生命活動に欠かせない成分です。

脂質には大きく分けて3つのタイプがありますが、そのどれもが「脂肪酸」からできています。また、脂肪酸にはいくつかの種類があり、それぞれ働きが違います。「脂質の質」を決めるのは、脂肪酸の種類なのです。

そして、前述のように、母乳の半分は脂質でできています。そのため、母乳の質を良くすることは、結果として脂質の質を良くするといっても過言ではありません。つまり、母乳の質を左右するのは脂肪酸の種類なのです。

脂肪酸の種類と働き

脂肪酸は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸は、動物性食品に多く含まれる脂質で、常温で固体になる特徴があります。飽和脂肪酸の摂取量が極端に少ないと、血管がもろくなりやすいことがわかっています。

ただ、現代の日本の食事では飽和脂肪酸は過剰摂取気味です。飽和脂肪酸の摂り過ぎは肥満やさまざまな病気の原因になります。

飽和脂肪酸を制限するためには、食肉などの食品を避ける必要があります。ただ、食肉などに含まれる栄養素の中には、植物性の食品で補うことが難しいものがあります。そのため、極端に動物性食品を制限せず、必要以上に食べないことが大切です。

不飽和脂肪酸は、その構造から「多価脂肪酸」と「一価脂肪酸」にわけられます。

多価脂肪酸は、αリノレン酸やDHAなどの「n-3系」、リノール酸やアラキドン酸などの「n-6系」があります。一価脂肪酸は、「n-9系」と呼ばれるオレイン酸などがあります。

このうち、リノール酸、αリノレン酸、アラキドン酸は「必須脂肪酸」と呼ばれます。これらは、体内で合成されなかったり、合成される量が少なかったりするため食物から摂取する必要があります。

また、αリノレン酸とアラキドン酸は、乳児の脳の発達に深く関わる栄養素です。ただ、アラキドン酸は体内でリノール酸から合成されます。そして、現代の日本の食生活では、アラキドン酸もリノール酸も過剰摂取気味です。そのため、これらは意識して減らす必要があります。

リノール酸は植物性の油に多く含まれます。また、アラキドン酸は動物性食品に多く含まれます。そのため、動物性食品の摂取はほどほどにして、さらには揚げ物などの食用油を多く使った食品も避けることが大切です。

αリノレン酸は、体内でDHAやEPAに変換されます。これらは脳の細胞膜に必須の成分です。これらが不足すると、脳の活動や発達が妨げられることがあります。魚などの油には、DHA・EPAが豊富であることが有名です。

特に、乳児期は脳が急激に発達します。このとき、αリノレン酸やDHAなどが足りないと、脳の発達が妨げられて成長が遅くなることがあります。

また、脂肪酸の一つであるトランス脂肪酸は、それ自体に働きがある脂質ではないため、摂取する必要が無いとされています。むしろ、トランス脂肪酸の摂り過ぎはさまざまな病気の引き金になることがわかっているため、なるべく摂らないことが大切です。

食品中に含まれるトランス脂肪酸の多くは、マーガリンや精製したサラダ油などに含まれます。これらは安価なので、食品加工の際によく用いられます。そのため、市販のお菓子や加工品にはトランス脂肪酸が含まれることが多いです。

母乳に多く含まれる脂肪酸

脂肪酸のうちの一つに「オレイン酸」があります。前述のように、オレイン酸は必須脂肪酸ではありません。ただ、母乳に一番多く含まれている脂質はオレイン酸であることがわかっています。オレイン酸は、オリーブオイルに多く含まれています。

オリーブオイルは、理想的な母乳の脂質の構成に近いといわれています。そのため、欧州では人工乳にオリーブオイルを足すこともあるようです。(ただ、日本の人工乳の栄養価は母乳に近く、家庭の衛生状況による添加はリスクが高いため、行うべきではありません。)

オリーブオイルは、比較的酸化しにくい特徴があります。炒め物などにも利用できるため、一般的な「サラダ油」に置き換えることが可能です。これによって、過剰気味なリノール酸の摂取を抑えることができます。

このように、オリーブオイルの摂取は、良質な母乳をつくるために有効です。ただ、オリーブオイルも脂質であることに変わりはありません。摂り過ぎると肥満・病気の原因になります。

以上のことから、魚食を多くしたり、加熱時の油をオリーブオイルにしたりすることが母乳の質の向上のために有効といえます。外食や加工品、お菓子などは控えて、なるべく自炊することが大切です。