妊娠・授乳中における魚の摂取:DHAと水銀の影響

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現代の日本では、魚離れが進んでいると言われています。1997年以降から魚の消費量は減少し続けており、魚よりも肉の消費量のほうが多くなっているといわれています。

ただ、魚に含まれるDHAは学習・記憶能力を高める効果があることがわかっています。妊娠中から継続してDHAを摂取した場合では、そうでない場合に比べて4歳時における子供の知能指数が高かったという報告もあります。

一方で、妊娠中の魚食はリスクも伴います。そこで、ここでは妊娠中に魚を食べることのメリット・デメリットについて解説していきます。

妊娠中における魚の摂取のメリット

魚は、多くのDHAを含んでいます。DHAとは、不飽和脂肪酸という脂質の一種です。DHAは固まりにくい性質があり、これは魚が冷たい海の中に生息するのに適しています。

脳には約140億の神経細胞があります。これらの神経細胞は脂質の膜で覆われています。DHAは、この神経細胞の膜に存在しています。

人が物事を記憶したり学習したりするとき、脳内の神経細胞が枝を伸ばすように伸びていきます。伸びた枝は他の神経細胞と連携をとることができるようになります。神経細胞の枝同士が神経伝達物質を交換しあうことによって、人間はさまざまな活動を行うことができます。

このとき、神経細胞の膜が硬いとうまく枝を伸ばすことができません。また、神経伝達物質の受け渡しがうまくできなくなります。

そこで細胞膜のDHAが増えると、サラサラした油の比率が多くなるため細胞膜が柔らかくなります。そのため、神経細胞がうまく枝を伸ばせるようになり、神経伝達物質の受け渡しもスムーズになります。

神経細胞がうまく枝を伸ばすことができないと、学習・習得がうまくできません。また、神経伝達物質の受け渡しがうまくいかないと、心身ともにさまざまな不調が起こりやすくなります。そのため、DHAの摂取は学習能力を高めて心身の不調を防ぐといえます。

特に胎児期は、人としての基本的な能力を得るために神経細胞がたくさん枝を伸ばします。また、神経細胞は乳児期にも、さまざまな学習・習得をするために枝を伸ばします。

胎児は母体から栄養をもらっています。また、母乳で育てている場合、乳児は母体から栄養をもらいます。そのため、母体の偏った食事は胎児や乳児へのDHA不足を招く恐れがあります。胎児・乳児期にDHAが不足すると、神経細胞の成長が妨げられて発達が遅くなることがあります。

以上のことから、子供の発達や健康のためには、母体が「DHAを含む魚」を食べることが大切といえます。

妊娠中における魚の摂取のデメリット

前述のように、魚食にはDHAによるメリットがあります。ただ、魚が含んでいるのはDHAだけではありません。魚の中には、水銀の含有量が高い種類があることがわかっています。

水銀が人体に有害なのは有名です。高濃度の水銀を摂取すると、神経障害や発達障害が起こることがわかっています。ただ、通常の魚に含まれる程度の量であれば人体に影響はありません。

ただ、胎児は母体よりも水銀の影響を受けやすいです。胎児は大人に比べて神経細胞の働きが活発です。そのため、水銀による神経障害が起こりやすいといわれています。

また、胎児は摂取した水銀を体外に排出することができません。そのため、大人よりも長い期間水銀の影響を受けることになります。前述のDHAと同様に、摂取した水銀も胎盤や母乳を通して子供に与えられます。そのため、妊娠・授乳期の魚の摂取には水銀によるデメリットがあるといえます。

ただ、どの魚にも同量の水銀が含まれているわけではありません。魚が含む水銀の量は、魚の大きさに比例して多くなります。

食物連鎖の上位にいる魚は、体の小さな魚を食べます。このとき、小さな魚が含む水銀が上位の魚に蓄積されます。そのため、食物連鎖の上位にいる大きな魚は水銀含有量が多い傾向にあるのです。

妊娠・授乳期に避けたほうがいい魚

前述のように、魚は水銀によるデメリットがあります。ただ、大きな魚を避けることで、水銀による子供への影響を限りなく減らすことができます。

マグロやキンメダイ、クジラなどは水銀含有量が多いため、注意が必要です。一食を80gとしたとき、マグロやキンメダイは週に一回までが安全だといわれています。カサゴやキダイが含む水銀量も多く、週に二回までが安全とされています。

ただ上記の魚以外でも、魚を生で食べることによって食中毒が起こる危険性があります。妊娠中に食中毒になると、流産を生じることがあります。そのため、妊娠中は魚の生食を避けて、中心部までしっかり火を通すことが大切です。

このように、妊娠中の魚食にはメリットとデメリットがあります。魚の含むDHAを摂取することには大きなメリットであるため、リスク回避のために魚を食べないことはオススメできません。妊娠・授乳期の食生活では、魚の種類と量、食べ方に注意した上でバランスの良い食事を心がけることが大切です。