妊娠中の貧血の悪影響:貧血予防・対策に有効な食生活

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貧血は、女性にとって非常に身近な病気です。女性の約17%で、貧血、もしくは貧血の疑いがあるといわれています。そのほとんどが、鉄欠乏性貧血という鉄不足による貧血です。

正常に月経がある女性であれば、月経血により毎月20~30mgの鉄を失います。また、ダイエットによる食事の偏りやストレスによる胃腸障害によって、鉄分の摂取・吸収量が不足することもあります。これらの理由によって、鉄が不足している女性は多いです。

妊娠中は特に貧血になりやすい時期です。そこで、ここでは妊娠中の貧血の原因を解説し、予防や改善のために必要な食生活について述べていきます。

妊娠中の貧血のメカニズム

血液は、細胞の成分と液体の成分に大別できます。赤血球や血小板、白血球などの細胞は、血漿という液体にのって全身を流れています。

赤血球は、ヘモグロビンという「鉄と結合したタンパク質」が主成分で、酸素を全身に運ぶ働きがあります。血漿は90%が水で、栄養素やホルモンなどを全身に運ぶ働きがあります。

胎児や子宮が大きくなると、体内の血液量が急激に増えます。ただ、血漿とその他の成分の増え方には差があります。血漿は40%以上増加するのに対して、赤血球は約17%しか増えません。そのため、相対的に血が薄い状態となります。赤血球には酸素を運ぶ働きがあるので、血が薄いと全身に酸素が行き渡りにくくなり、貧血の症状が出ます。

また、赤血球の材料の一つである鉄分が足りなくても血が薄くなります。母体だけではなく、胎児が血を作るためにも鉄が必要です。母体は、自分の身体より優先して胎児に鉄を送ります。そのため、妊娠中は貧血になりやすい状況といえます。

血液以外にも、鉄は肝臓などに蓄えられています。これらの鉄は「貯蔵鉄」と呼ばれ、赤血球の鉄が足りなくなったときなどに使用されます。妊娠前から貧血気味の人は貯蔵鉄が少ないことが多く、妊娠中に貧血の症状が強く出ることがあります。

妊娠中の貧血の悪影響

胎児の神経系の発達は、妊娠初期に行われます。そのため、妊娠中期の貧血は胎児に大きな影響はありません。ただ重度の貧血になると、胎児に栄養や酸素が十分に行き渡りにくくなり、低体重児になる可能性があります。

また、貧血によるフラつき・めまいなどの症状は、転倒による流産や切迫早産などを引き起こす可能性があります。特に立ちくらみは、妊娠中に多くの人が感じる症状の一つです。ゆっくり立ち上がったり、支えがあるところで立ったりするなどの工夫が大切です。

妊娠中の貧血による分娩への影響

妊娠中の貧血は分娩時にも影響します。貧血は酸素や栄養を身体に運ぶ能力が低下している状態なので、疲れやすくなります。体力が低下した状態で分娩を迎えると、子宮の収縮がうまくいかず、分娩が長引くこともあります。

また、血液が薄いと血が止まりにくくなります。そのため、分娩時に大量出血を起こす可能性があります。また、子宮の戻りが悪くなったり、産後の不正出血が続いたりすることもあります。

妊娠中の貧血による産後への影響

分娩には出血がつきものなので、産後は貧血になりやすくなります。妊娠中から貧血症状があると、産後の貧血はより重い症状になりやすいです。そのため妊娠中に貧血が起こっていると、体力が低下した状態で新生児の面倒をみなければいけない環境を出産後に作ることになります。

また、母乳は血液から作られます。そのため、材料となる血液が足りないと、母乳が出にくくなります。

現在の人工乳(粉ミルク)の栄養価は母乳に近いため、赤ちゃんが栄養失調になる心配はありません。ただ、人工乳は免疫成分を含んでいません。そのため、できるだけ母乳で育てるのが理想です。

母乳は、吸啜刺激(きゅうてつしげき:赤ちゃんが吸う刺激)がないと分泌されません。そのため、子供の栄養不足を補うために、早いうちから人工乳を使用すると、母乳育児がうまくいかなくなることがあります。以上のことから、妊娠中の貧血は子供にも影響があるといえます。

貧血予防のための食事

鉄欠乏性貧血の予防・対策には、食生活の見直しがとても大切です。鉄の含まれる食材を食べることはもちろん、鉄の吸収を妨げる食品の摂取に気を配る必要があります。

鉄は、「ヘム鉄(動物性鉄)」と「非ヘム鉄(植物性鉄)」に分けられます。非ヘム鉄は、ヘム鉄に比べて吸収されづらいのが特徴です。そのため貧血対策には、鉄を多く含む動物性食品を中心に献立を考えることが大切です。

ヘム鉄は、レバーや赤身肉、貝類、青・赤身魚に多く含まれます。非ヘム鉄は、青菜・ひじきなどに多く含まれます。非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂取すると吸収が高まります。ただ、ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、生で食べるか調理時間を少なくする工夫が必要です。

また、クエン酸やリンゴ酸・酢酸などにもビタミンCと同じ効果があります。非ヘム鉄は吸収が悪いので、たくさん食べることが大切です。そのため貧血対策には、茹でた青菜の酢和えなどの料理や果物を献立に入れることが有効です。

コーヒーや緑茶、ぶどうの皮などに含まれる苦味成分「タンニン」は、体内で吸収されるよりも早く鉄と結合して、鉄の吸収を妨げてしまいます。そのため、食後1時間くらいはこれらの飲食を避けるのが無難です。