妊娠中に生じる胸焼け(逆流性食道炎)の原因と対策

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「逆流性食道炎」と聞くと、身近な病気だと感じないかもしれません。ただ妊婦の多くが、胃液や胃の内容物が上がってきて胸焼けをしたり、口の中が酸っぱくなったりなどの症状を経験しているといわれています。実は、これらの症状は逆流性食道炎によるものであることが多いです。

逆流性食道炎とは、胃液や胃液の混ざった胃の内容物が逆流して、食道に炎症を起こすことをいいます。

胃液は、強い酸性の液体です。食べ物を消化したり、外部から侵入した細菌などを殺したりするために働いています。

胃は、内側表面に存在する粘液によって胃液から守られています。ただ、胃以外の組織は胃液に対して無防備なので、胃液の酸によってダメージを負ってしまいます。そのため胃液の逆流が起きると、食道や喉などが傷ついて逆流性食道炎の症状が起こります。

逆流性食道炎は、身体が衰えてくる高齢者に多い病気です。ただ、妊娠中も逆流性食道炎になりやすい時期です。そこで、ここでは妊婦が逆流性食道炎になるメカニズムについて解説し、予防法や悪化防止のために気をつけるポイントなどについて述べていきます。

妊娠中に生じる逆流性食道炎の原因

妊娠月が進むと胎児が大きくなるので、その分だけお腹(子宮)も大きくなります。一般的に、妊娠中期には外からお腹の膨らみがわかる程度の大きさになります。

子宮は、母体の胃や腸などを圧迫しながら膨らんでいきます。胃が子宮に圧迫されると、圧力によって「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)」が開きやすくなります。

下部食道括約筋とは、食道と胃をつなぐ組織のことです。下部食道括約筋は、飲食物などを飲み込んだとき以外はしっかり閉じるようになっています。これにより、胃液や胃の内容物が逆流するのを防いでいます。

下部食道括約筋が開きやすくなると、胃液を含んだ胃の内容物が逆流しやすくなります。そのため逆流性食道炎の症状が出やすくなります。

また、妊娠中に多く分泌される女性ホルモンの一つである「プロゲステロン」も逆流性食道炎を起こす原因になっています。

プロゲステロンは、流産を防ぐために子宮筋などの「平滑筋(へいかつきん)」を弛緩させます。平滑筋とは、手指のように意識して動かす筋肉ではなく、無意識の下で動く筋肉です。血管を動かす筋肉や消化器官を動かす筋肉の一部も平滑筋です。

このようにプロゲステロンは、子宮の筋肉を弛緩させるとともに、消化器官を動かすための筋肉も弛緩させます。そのため、消化器官での消化能力が低下し、胃に内容物が長くとどまりやすくなります。

胃に内容物が長くとどまると、その分胃酸も多く分泌されます。そのため、ゲップなどとともに胃液が逆流し、食道に炎症を起こしてしまうことがあります。

また、前述の下部食道括約筋も平滑筋の一つなので、プロゲステロンの影響で緩みやすくなります。妊娠中は、このような複合的な理由で逆流性食道炎になりやすい時期といえます。

妊娠中の逆流性食道炎の対策

妊娠中における逆流性食道炎は、妊娠を維持するホルモンや大きくなる胎児が 要因となるため、根本的な原因を取り除くことができません。ただ、出産とともに症状の原因が取り除かれることになるので、産後には治ることが多いです。

逆流性食道炎は胃液が食道を傷つけることによって起こるため、胃薬で改善することがあります。妊娠中に使用できる胃薬は市販されているので、薬店などで購入できます。ただ、種類がかなり多く、妊婦に推奨されていない成分が含まれる薬もあります。そのため、専門家に相談したうえで薬を使用するのが大切です。

また、胃酸や胃の内容物は横になっているときや、前かがみになったときなどに逆流することが多いです。そのため、枕を高くして寝るなど、頭を胃より高い位置に維持することを心がけましょう。

胃酸を多く分泌させる食べ物を控えることも逆流性食道炎の改善につながります。以下に、胃酸の分泌を促進させる食品をあげていきます。

胃酸を多く分泌させる食品

脂肪分の多い食べ物や甘いもの、香辛料、柑橘類などを食べると、胃酸が多く分泌されます。また、飲み物に含まれることの多い「カフェイン」も胃酸の分泌を促進します。カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶、チョコレートなどに含まれます。逆流性食道炎の症状がある場合、これらの食品はなるべく避けるのが好ましいです。

また、根菜や海藻などの食物繊維が多い食べ物も胃酸の分泌を多くします。ただこれらは、食べることによるメリットも多いので、身体の調子をみて摂取するのが大切です。

炭酸を含む飲み物は、ゲップとともに胃の内容物を逆流させやすいです。そのため、妊娠中はなるべく炭酸飲料を控えるのが賢明です。