年齢による妊娠率低下と流産率の上昇:卵子の老化

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妊婦の平均年齢は年々上昇しています。初産年齢の全国平均は、1950年に24.4歳だったのが2011年には30歳を超えました。初産年齢だけではなく、2人目や3人目における出産時の年齢も上がっています。

医療の発達によって平均寿命が伸び、年をとっても若々しい人が多くなっています。ただ、妊娠適齢期は寿命のように伸びていくことはありせん。年齢が上がるごとに妊娠率が低下し、高齢出産(35歳以上の出産)では流産の発生率が上がることがわかっています。

30歳以下では30%ほどの妊娠率であっても、35歳になると約18%、40歳になると約5%まで低下します。また、全年齢における流産の発生率は約15%です。これが、35歳で約20%、40歳で約40%、42歳で約50%になるといわれています。

そこでここでは、なぜ年齢によって妊娠率や流産率が違うのかを解説していきます。

年を取ることによる卵子の老化

健康的な男性では、精子のもととなる「精母細胞」は、思春期以降ずっと作られ続けます。それに対して、卵子のもととなる「卵母細胞」は、胎児のときに作られてから増えることはありません。

胎児のときに作られた卵母細胞は、卵巣の中に蓄えられます。卵母細胞は、排卵のタイミングまでその活動を休止して眠っている状態になっています。

思春期が来ると、眠っていたいくつかの卵母細胞が活動を再開して成熟し始めます。このうちの一個だけが成熟して、排卵まで至ります。妊娠が成立しない場合、排卵された卵子は厚くなった子宮内膜とともに体外へ排出されます。これが月経です。

この卵母細胞の活動の再開は通常約1ヶ月周期で起こります。活動を再開しなかった卵母細胞は、自分の番が来るまで眠ったままになります。ただ、身体が老化するのと同様に、卵母細胞も時間の経過とともに老化していきます。

卵母細胞が老化すると、若いときには起こりにくかったエラーを生じるようになります。卵母細胞は、減数分裂を経て卵子になります。減数分裂とは、23対46本の染色体を23本にするための分裂です。老化した卵母細胞は、減数分裂に失敗して染色体異常を起こしやすくなっています。

減数分裂の失敗によって染色体異常が起きた卵子が受精すると、染色体異常を持った受精卵になります。染色体異常を持った受精卵の多くは、正常に育たずに流産になります。

つまり、高齢出産では染色体異常を持つ卵子が多くなるため、流産の発生率が高くなるのです。

また、同じ理由で妊娠の成立が少なくなります。卵子に異常があると、受精しなかったり受精しても着床しなかったりすることが多いです。また、異常がある受精卵は着床しても妊娠を自覚する前に成長が止まることがほとんどです。そのため、高齢出産では妊娠率が低下します。

精子は老化しないのか?

前述のように、卵子は女性の身体とともに年をとります。一方で、男性が健康であれば精子は常に新しく作られ続けます。精子は約80日かけて作られ、古くなった精子は分解されて体内に吸収されます。

精子の約10%には染色体異常があるといわれています。ただ、妊娠するために膣内に発射された数億の精子のうち、受精に至るのは通常1つです。また、受精するためには一番奥の卵管膨大部(らんかんぼうだいぶ)までたどり着かなければなりません。

子宮の入り口から卵管膨大部までは約17~20cmといわれています。精子の大きさは0.06mmなので、精子にとって卵管膨大部までのみちのりはかなり長いものといえます。

この長い距離を制して、一番のりできる元気な精子が受精に至ります。異常をもつ精子が元気な精子より先に受精することは困難な状況といえます。そのため卵子に比べて、精子の染色体異常は妊娠にあまり影響がないといわれています。

ただ、男性の年齢があがるとともに、精液の量や濃度、元気な精子の数が減少することがわかっています。これらが減ると、自然妊娠の成功率が下がります。

また、男性が高齢だと流産率が上がるという研究結果もあります。これは、加齢で元気な精子が減ることによって、染色体異常を持つ精子が受精まで至りやすいため、結果的に受精しても流産に繋がると考えられているからです。

このように、35歳以上の女性では出産できる確率が減少します。ただ、35歳になることによって必ずしも受精の確率が下がるわけではありません。身体が老いるような生活習慣がある人は、35歳より若くても妊娠しづらくなることがあります。それに対して、健康的な生活を送ることで妊娠しやすくなることもあります。

また、不妊の原因が年齢によるものではなく、自覚症状のない病気によるものである可能性もあります。

そのため、妊娠を望んでいても1年間妊娠しない場合は、妊娠への対策を講じるが好ましいです。不妊治療には時間がかかることが多いため、30歳以上であったり複数の子供を望んでいたりする場合は早めの対処が大切です。