妊娠中における血行促進の重要性:静脈瘤の防止

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妊娠中は、身体にさまざまな変化があらわれます。おなかが大きくなるのはもちろん、身体の見えない部分も変化します。そのため妊娠中は、妊娠前では予期しない身体症状が出ることがあります。

そのうちの一つに「静脈瘤(じょうみゃくりゅう)」があります。静脈瘤は、筋力が低下してくる40歳以上の女性に多い病気です。ただ、妊娠中も静脈瘤ができやすい時期です。そこで、ここでは妊娠中に静脈瘤ができるメカニズムと予防法について述べていきます。

静脈瘤とは

血液は動脈を通って全身に行き渡り、静脈を通って心臓に戻ります。このとき、血液は心臓のポンプによって動脈へ送り出されます。ただ、心臓のポンプによる勢いは、静脈にたどり着くころには弱くなります。

多くの場合、下半身の血液は重力に逆らって心臓に戻ります。そのため、血液が重力に負けて逆流しないように、静脈には血液の逆流を防ぐ「弁」があります。

この弁が何らかの理由で働かないと、血液 の逆流を招くことがあります。静脈内には、次々と新しい血液が送り込まれています。そのため、血液が逆流すると血管に血液が溜まります。そうなると、血液が溜まった部分が盛り上がったり、血管が目立って蛇行したりします。これが静脈瘤です。

手や腕は心臓から近く血液が逆流しにくいため、静脈瘤ができることはほぼありません。静脈瘤のほとんどは、足の裏側や外陰部、肛門などの下半身に起こります。

妊娠中に静脈瘤ができるメカニズム

胎児は母体の血液から酸素や栄養をもらっています。そのため妊娠中は、妊娠前に比べて血液量が増加します。その増加量は、ピーク時で妊娠前の1.3~1.5倍といわれています。

それに対して、弁が血液の増加に合わせて大きくなることはありません。そのため血液量が増えると、弁がうまく働かなくなることがあります。前述のように、弁がうまく働かなくなると、血液が逆流しやすくなります。

また、妊娠中は子宮が大きくなり、身体のいろいろな器官を圧迫します。妊娠後期には、体内で一番大きい静脈である「下大静脈(かだいじょうみゃく)」まで子宮によって圧迫されます。

下大静脈は、下半身の血液が心臓に戻るときに通る静脈です。下大静脈が圧迫されると下半身の血液が心臓に戻りにくくなります。そのため、下半身の静脈に血液が溜まりやすくなります。

このような複合的な理由から、妊娠中は静脈瘤ができやすい時期といえます。

静脈瘤の防止

静脈瘤は、基本的に特別な治療を行う病気ではありません。また、産後には良くなることがほとんどです。ただ、静脈瘤ができると、その部分に痛み・足のだるさなどの不快症状が出たり、外陰部にできた静脈瘤が分娩時に破けて出血したりすることがあります。そのため、静脈瘤ができることを防止するに越したことはありません。

血液の循環が悪くなると、血管に血液が溜まりやすくなるため静脈瘤ができやすくなります。そのため、静脈瘤の防止には血行を促進することが大切です。

静脈瘤の防止:身体を温める

身体が冷えていると、血液の循環が悪くなります。そのため、身体を温めることが静脈瘤の防止に有効です。暖かい季節でも、冷たい飲み物を常飲することによって身体に冷えを生じていることがあります。暖かい季節の冷えというのは、自分では気づきにくいため、妊娠中は冷たい飲み物を避けるのが賢明です。

また、シャワーだけの入浴も身体を冷えやすくします。毎日湯船に浸かり、湯冷めしないように入浴後の薄着を避けましょう。

寒い季節は身体が冷えやすいので血行が悪くなりがちです。太い血管が身体の表面近くにある手首や足首、首などの露出を避けると、熱の放出が妨げられて体の冷えを防止できます。また、カイロの有効活用もおすすめです。

静脈瘤対策:運動

妊娠中の運動不足も、静脈瘤ができやすくなる要因の一つです。血液は心臓のポンプによって全身に運ばれます。ただ前述のように、重力による抵抗があるため、心臓のポンプだけで下半身の血液が心臓に戻ることは困難です。そのため、ふくらはぎが第2の心臓の役割を担っています。

歩行などによってふくらはぎに力が入ると、血管が圧迫されます。血管が圧迫されると、血液は空いている場所に移動しようとします。ちょうど、水が流れているホースを潰したときと同じ状態です。

このとき、静脈には心臓からの血液が次々と送り込まれていきます。また、静脈内には逆流を防ぐ弁もあります。そのため、ふくらはぎの筋肉に押し出された血液は心臓側に向かいます。

このように、ふくらはぎの筋肉は下半身の血流を助けています。そのため、ふくらはぎを動かす運動を行うことで下半身の血行が良くなり、静脈瘤の生成を防止することができます。

ふくらはぎは、歩くことやつま先立ち、階段をのぼることなどによって力が入ります。ただ、妊娠中はお腹が張るような激しい運動や転倒を避けなければなりません。そのため、妊娠中においての静脈瘤防止には、歩行運動がおすすめです。

妊娠中の歩行は静脈瘤の防止だけではなく、体重管理や体力強化にもつながります。そのため、妊娠中は意識して歩行運動を行うべきといえます。ただ、お腹が張るときや疲れを感じるときは中断して、無理をしないのが何よりも大切です。