染色体異常が起こる仕組み:自然流産と化学的流産

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人間は繁殖しにくい生き物です。人間における妊娠の総数に対して、約15%が自然流産になるといわれています。自然流産とは、人工的な行為を行わずに起こった流産のことをいいます。これに対して、人工的に流産を起こす「人工妊娠中絶」による流産は「人工流産」といいます。

かつて、自然流産は母体が不健康なため起こると言われていました。また、今でもそのように思っている人は少なくないようです。ただ自然流産の多くは、胎児自身の異常によるものです。

自然流産のほとんどが妊娠初期(妊娠12週未満)に起こります。また、流産になった胎児の約60%に、染色体異常が見つかっています。

以上のことから、妊娠初期における流産の多くが、染色体異常を持った胎芽(妊娠8週未満の胎児のこと)・であり、胎児の自然淘汰によるものと考えられています。そこで、ここでは自然流産を起こす「染色体異常」について解説していきます。

染色体異常が起こるメカニズム

同じ人間でも、髪や肌の色、体型などさまざまな違いがあります。これらの違いを生んでいるのが「遺伝子」という人体の設計図です。遺伝子は、親から子へと受け継がれていきます。

遺伝子は、細胞の中に存在する「染色体」に存在します。とある条件下において色素で染めることができたため、「染色」体と名付けられました。人間の細胞は46本の染色体を持っています。

染色体は、よく似た構造のものが二本で一対になっています。人間の染色体は、22対の「常染色体(じょうせんしょくたい)」と1対の「性染色体」で構成されています。

常染色体は、それぞれ1~22までの番号が振られています。同じ番号の染色体は、ほぼ同じ形をしています。性染色体は男女を分ける染色体です。女性はX染色体を二本、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っています。

前述のように、人間の染色体は23対46本です。ただ、卵子や精子には、染色体は1~22までの常染色体と性染色体の計23本だけ含まれています。これは、精子と卵子が合体して受精卵になったときに23対46本になるためです。

卵子や精子の染色体は、減数分裂を経て23本になります。減数分裂とは、46本の染色体を半分にするための分裂です。

卵子と精子は、それぞれ卵母細胞と精母細胞の減数分裂によって作られます。このとき減数分裂に失敗すると、染色体異常を持った卵子・精子になります。これが受精すると、染色体異常を持った受精卵になります。

染色体異常をがあるということは、人体の設計図に不備があることを意味します。そのため、染色体異常を持もつ受精卵の多くは、生まれる前に成長が止まって流産になります。妊娠初期における流産のほとんどが、染色体異常によるものなのです。

妊娠確定前における受精卵の成長停止:化学的流産

前述のように、染色体異常をもつ受精卵の多くは成長が止まります。成長の停止が妊娠成立後に起こると「流産」となりますが、妊娠が成立する前に成長が止まる受精卵も多いです。

受精卵が着床すると、月経予定日付近における妊娠検査薬の使用で陽性反応が出ることがあります。ただ、受精卵に染色体異常があると、医師による妊娠確定診断の前に受精卵の成長が止まることがあります。そうなると、流産することになります。これは、一般的に「化学的流産」と呼ばれています。

つまり、医師によって妊娠が確定診断されて胎児が成長した後の流産ではなく、受精卵になったものの着床が持続しなかったものを化学的流産といいます。

医師による確認ではなく、検査薬によって「化学的」に判明した妊娠の「流産」、ということでであるため、化学的流産と名付けられました。ただ実際は、化学的流産は流産ではありません。

「妊娠が確定した」という診断は、胎芽の心拍の確認によって行われます。一般的に、心拍が確認できるのは妊娠6週ごろからです。

一方で、妊娠検査薬は早くて着床数日後から陽性反応を示します。これは、妊娠検査薬が「hCG」というホルモンを感知する仕組みになっているからです。hCGは、受精卵が着床すると分泌が始まります。

妊娠検査薬を使用するタイミングが早いと、妊娠検査薬による陽性反応と医師による妊娠確定診断が出るまでに期間があくことがあります。確定診断前に受精卵の成長が止まって排出されても、医学的には「非妊娠時」になるため、実際には「流産」ではないのです。

昔は、医療機関で調べないと妊娠が判明しませんでした。ただ、現在では誰でも簡単に妊娠検査薬を購入して調べることができます。そのため、昔では認識されていなかった化学的流産がわかるようになりました。

妊娠を望んでいると、妊娠検査薬の陽性反応でぬか喜びしてしまい、化学的流産でとても落ち込んでしまうことが多いようです。ただ、化学的流産は自然淘汰によるものなので避けられるものではありません。次の妊娠のためにも、化学的流産が起こっても気にし過ぎないことが大切です。