産後1ヶ月間の過ごし方:骨盤臓器脱の防止

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女性にとって、出産は大仕事です。分娩にかかる時間は、経産婦で6~8時間、初産婦で11~15時間といわれています。また、分娩には平均約300ml程度の出血を伴います。

また、分娩が終わるとまもなく新生児のお世話が始まります。平均約3時間おきの授乳をする日々が、長くて3ヶ月程度続きます。また、新生児は自分で動けないため、約3kgの身体を持ち上げる作業を繰り返す必要があります。

このように新生児期には、分娩で体力を消耗した身体を酷使することになります。分娩で赤ちゃんが体外に出ることによって身体が軽くなるため、出産前より元気なつもりでつい無理をしてしまう人も多いです。

ただ、産後1ヶ月間は「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれ、母体の休息が最優先とされる時期です。

日本の伝統的な産後の習慣に「床上げ(とこあげ)」というものがあります。床上げとは、産後1ヶ月後のことをいいます。日本では昔から、分娩1ヶ月後の床上げまで布団を片付けずに、ずっと横になっているべきとされてきたのです。

ただ、現在の家庭は核家族がほとんどなため、まわりのサポートを得られずこのような習慣を行っていない人が多いです。ただ、産褥期に無理をすると、一生治らない病気にかかることがあります。そこで、ここでは産褥期の無理が起こす身体的トラブルについて解説し、産褥期の過ごし方について述べていきます。

産後に起こる骨盤臓器脱

産後は、分娩のために骨盤が開いた状態になっています。それとともに、子宮や膀胱などの臓器を支えている「骨盤底筋群」も緩んでいます。

骨盤底筋群は、さまざまな筋肉や靭帯がハンモック状になっている筋肉の集まりです。骨盤底筋群は骨盤につながっていて、産道を取り囲むように位置しています。

分娩時には、赤ちゃんが通ることによって産道が緩んで広がります。このとき、産道を取り囲んでいる骨盤底筋群も緩むのです。分娩によって骨盤底筋群が緩むと、子宮や膀胱などの臓器が重力に負けて外に飛び出すことがあります。これを「骨盤臓器脱」といいます。

特に、子宮が飛び出した状態を「子宮脱」、膀胱が飛び出した状態を「膀胱脱」、直腸が飛び出した状態を「直腸脱」といいます。

また、これらの臓器が通常の位置より下がっている状態を、それぞれ「子宮下垂」「膀胱下垂」「直腸下垂」といいます。これらは、命に関わる病気ではありません。ただ、外に飛び出た部分が擦れて出血したり、排尿や排便がしづらくなったりします。

また、骨盤臓器脱が起こると自力で治すことができません。骨盤臓器脱を治療するためには、病院で臓器が落ちてこないように手術をする必要があります。そのため、骨盤臓器脱を防止することが大切です。

産褥期の過ごし方と骨盤臓器脱の関係性

前述のように、骨盤臓器脱は骨盤底筋群が緩んで弱くなることによって起こります。ただ、骨盤内の臓器は、力が加わらない限り外に出ることはありません。極端に言えば、ずっと横になった状態で何もしなければ骨盤臓器脱は起こらないのです。

骨盤臓器脱は、骨盤底筋群が緩んでいるときに臓器が重力によって下にひっぱられたり、腹部に力が入ったりすることによって起こります。そのため、産褥期はこのような状況をなるべく避けることが大切です。

家事は、立って行う作業がほとんどです。立つ時間が長いほど骨盤臓器脱が起こるリスクが高まります。そのため、産褥期の家事は家族などに協力してもらうことが大切です。

また、重い荷物を持つときや長時間の歩行などは腹部に力が入りやすいため、産褥期には避けることが賢明です。また、排便のときに力むことによって骨盤臓器脱を起こすこともあります。便秘のときなどに無理に腹部に力を入れることはやめましょう。

骨盤臓器脱の防止策

前述のように、骨盤臓器脱は骨盤底筋群の緩みによって起こります。出産による骨盤底筋群の緩みは生理的なものであるため防止できません。そのため、骨盤臓器脱の防止には、産後に骨盤底筋群を鍛えることが大切です。

骨盤底筋群は、肛門・膣を締める動きや尿を止める動きによって鍛えることができます。具体的には、肛門や膣をへそに近づけるように力を入れて行います。

骨盤底筋群を鍛えることによって、骨盤臓器脱だけではなく加齢時の頻尿や尿もれなども防ぐことができます。そのため、普段から骨盤底筋群を意識して鍛えることが大切です。

ただ、産褥期はさまざまなトラブルが起こりやすい時期です。そのため、骨盤底筋群を鍛える運動は産後の1ヶ月検診が終わってから行うことが賢明です。

このように、産後の無理は、その後の一生に関わることがあります。そのため、産褥期には家事を完璧に行おうとせず、休息することを最優先して過ごしましょう。