冷え症と不妊の関係性:冷えによる多嚢胞性卵巣症候群

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「冷えは万病の元」といわれるように、身体の冷えはさまざまな不調を引き起こします。特に、女性は昔から「身体を冷やしてはいけない」と言い伝えられてきました。これは、女性が冷えやすい体質であるとともに、女性の冷えは不妊の原因になるためです。

慢性的に身体の冷えを感じる「冷え性」は、年々増えているといわれています。また、冷えの自覚がない「かくれ冷え症」も増えており、これらを合わせると女性のほとんどが冷えているともいわれています。

また、現在、20~40代の妊娠可能な女性に「多のう胞性卵巣症候群(PCOS)」という病気が増えています。PCOSが起こるメカニズムは、正確には解明されていません。ただ、冷え症と密接に関係しているといわれています。そして、PCOSが起こると妊娠しづらくなることがわかっています。

そこで、ここでは不妊の原因となるPCOSと冷え症の関係性について述べていきます。

多のう胞性卵巣症候群が発生する原因

多のう胞性卵巣症候群(PCOS)」とは、卵巣内にたくさんの卵胞が溜まった状態のことをいいます。

女性は、胎児期に一生分の卵子の元を卵巣に蓄えます。卵子の元を包む「卵胞」は、思春期を迎えて月経が始まると、1度に数個ずつ成長を始めます。

卵胞は、脳の下垂体から分泌される「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の影響で成長します。そして、成長した卵胞は、同じく下垂体から分泌される「黄体化ホルモン(LH)」によって卵子を卵管に送り出します。これが排卵です。

このとき、これらのホルモンが正常に分泌されないと、卵胞が十分に成長できずに排卵に至らないことがあります。特に、PCOSの患者では黄体化ホルモンの分泌量が多いことがわかっています。

排卵できずに卵胞が卵巣にとどまると、成長しきれなかった卵胞が卵巣表面に溜まります。これがPCOSの診断基準となっており、卵巣内にネックレスのように連なって見えるため「ネックレスサイン」と呼ばれています。

また、PCOSでは、排卵が正常に行われないため、月経が起こらなかったり月経周期が異常に長かったりなどの「月経異常」が現れます。

このように排卵が正常に行われないことを「排卵障害」といいます。排卵障害は、不妊の直接的な原因になります。つまり、PCOSがあるということは、妊娠しづらい状態であるといえます。

冷え症とPCOSの関係性

身体が冷えると、血管が収縮して全身を巡る血液の量が減り、血行が悪くなります。血液は、酸素や栄養素の他にホルモンなどを運ぶ役割を担っています。

前述のように、卵胞が成長するためには「脳が分泌するホルモン」が卵巣に届く必要があります。そのため、血行が悪くなるとこのようなホルモンの運搬がうまくいかなくなり、卵胞が成長しにくくなります。

また、下垂体のホルモン分泌は視床下部の指示によって行われます。冷えによる血行不良は、ストレスを感じやすくしたり自律神経の働きを乱したりすることがあります。

視床下部は、このようなストレスや自律神経の働きを管理しています。そのため、血行不良が原因でストレスや自律神経の乱れが生じると、視床下部が正常に働きにくくなり、ホルモン分泌の指示もうまくいかなくなります。

このように、冷えによる血行不良はホルモンバランスを乱しやすくするため、PCOSを生じやすい環境を作るといえます。

また、PCOSがある人の卵巣の表面は、厚く固くなっていることがわかっています。卵巣の表面が厚くなったり固くなったりしていると、卵子がこれを破って飛び出ることが困難であるため、排卵障害の原因となります。

卵巣表面が硬化する原因は特定されていませんが、東洋医学の分野では血行不良が原因の一つとされています。そのため、血行不良を起こす冷えは、排卵を起こしづらくしている可能性があるといえます。

PCOS防止のための冷え対策

これまでに述べた通り、冷えからくる血行不良はPCOSを生じやすくするといえます。そのため、PCOSを防ぐためには、腹部や下半身の冷えを改善することが大切です。

もともと、女性は冷えやすい体質であり、下半身の血流が悪くなりやすいです。そのため、身体が冷えているという自覚がなくても、身体を温める習慣を身に付けることが大切です。

女性の一般的なファッションであるスカートは、下半身が外気に触れるため腹部が冷えやすくなります。そのため、スカートを着用するときは、インナーを厚めにしたりカイロなどで腹部や腰を温めたりするなどの工夫が大切です。

また、パンツファッションであっても、下半身を締め付けるようなキツめの衣服は血行を悪くします。最近では、タイトなデザインでも伸縮性に富んだ素材の衣服があるため、ピッタリしたデザインの服を着用したいときはこのようなものを選ぶことが大切です。

なお、女性の冷え症の大きな原因は、筋肉の不足による熱産生量の低下です。そのため、冷え症を改善するためには、運動量を増やして筋肉を鍛えることが最も大切といえます。

特に、歩行やランニングなどの運動は下半身が鍛えられるため、冷え対策に最適です。通勤や通学時に歩行距離を長くしたり、歩行をランニングに変更したりするなどの生活習慣の工夫が大切です。

ちなみに、PCOSは妊娠を望む人だけ注意すればいい病気ではありません。PCOSでは、男性ホルモン量が増えることによって、声が低くなったりひげが濃くなったりなどの症状が出ることがあります。

これらの症状は、一般的な女性像にそぐわないものであるため、うつなどの別の症状を起こす原因となります。そのため、妊娠を望まない人であっても、PCOSを防ぐための冷え対策は行うべきといえます。

また、腹部の冷えを防ぐと、ホルモンバランスが整うことによって女性特有の不調が起こりにくくなります。女性にとって冷え症は大敵です。これまでに述べたような冷え対策を行い、将来の不妊やホルモンバランスの乱れによる身体の不調を防ぎましょう。