月経前症候群(PMS):月経前の食欲増加や嗜好の変化

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女性は、約一ヶ月周期で体調が変化します。特に、月経前にはさまざまな体調変化が起こりやすいです。このような月経前に起こる心身の不調を、「月経前症候群(PMS)」といいます。

PMSの症状は個人差が大きく、その種類は200種類を超えるといわれています。そのうちの一つである「月経前の食欲増加」は、多くの人が経験している症状です。

月経前の食欲増加は一時的なものであるため、月経が起こると症状が治まることが多いです。ただ、症状が重いと肥満や摂食障害などの引き金になることがあります。

また、月経前に食事の嗜好が変わる人も多いです。これも、月経が起こることによって治まることがほとんどです。ただ、症状が重かったり継続してしまったりすると、肥満や高血圧などが起こるリスクが高くなります。そこで、ここでは月経前に食欲や嗜好が変化するメカニズムと対策について述べていきます。

月経前の食欲や嗜好の変化

月経周期は、女性ホルモンのバランスが変化することによって起こります。月経が終わる頃から、「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌が増え始めます。そして、エストロゲンの体内濃度がピークに達すると、排卵が起こります。排卵は、月経初日から約2週間後に起こります。

卵子を包んでいた「卵胞(らんぽう)」は、排卵後に「黄体(おうたい)」という組織に変化して「プロゲステロン」という女性ホルモンを分泌し始めます。プロゲステロンの体内濃度は排卵の数日後にピークを迎えて、その後分泌量が低下していきます。そして、排卵から約2週間後に黄体が寿命を迎えてプロゲステロンの分泌が止まり、月経が起こります。

プロゲステロンには、妊娠に備えた身体作りをするために栄養素を体内に蓄えようとする働きがあります。この働きによって、身体がより多くのエネルギーを得ようとするため、プロゲステロンの体内濃度が高い時期である月経前に食欲が増加しやすいのです。

また、プロゲステロンは栄養素だけではなく、水分も身体に溜め込もうとします。そのため、全身の細胞が水分を溜め込みやすくなり、身体がむくみがちになります。

このとき、舌の細胞も水分を蓄えてむくみます。そのため、味を感じにくくなって濃い味付けを好みやすくなります。

月経前の食欲増加は、必要エネルギー量が増えるため甘いものやご飯などを欲しやすいです。このとき、舌のむくみによって濃い味付けを好む状態になっていると、過度に甘い食品を食べてしまったり、おかずの味が濃くなることによってご飯の量が増えたりするため、摂取カロリーが多くなりやすいです。

前述のように、月経が起こることによって食欲が元に戻ることが多いです。ただ、月経前の食欲増加によって大幅に摂取カロリーが増えると、このときに体重が増えることがあります。特に、症状が重いと月経後に体重が戻らずに肥満になることがあります。

現代の女性は、「痩せていることが美しい」という価値観を持つ人が多いです。そのため、食べることに罪悪感を覚える人も少なくありません。このような人が月経前の食欲増加によってたくさん食べてしまうと、月経が起こって食欲が戻ったとき、身体が食べ物を受け付けなくなる「拒食症」になることがあります。

拒食症になると、身体に必要な栄養素が供給されなくなります。そのため、さまざまな病気の原因になったり、反動でたくさん食べてしまう「過食症」が起こったりします。

また、プロゲステロンによって濃い味が好みになると、塩辛いものを多く食べることがあります。塩味の濃いものを食べる習慣が続くと、高血圧などの生活習慣病が起こるリスクが高くなります。

月経前による食欲増加の対策

プロゲステロンによる食欲の増加は妊娠のための働きであるため、完全に防止することはできません。ただ、食べ方や食べるものの工夫をすることによって、食欲増加を最低限に抑えることはできます。

前述のように、月経前には甘いものを食べたくなる人が多いです。ただ、甘いものの摂取は急激な血糖値の上昇を起こします。急に血糖値が上がると、反動によって血糖値が急低下しやすいです。

血糖値が下がると、身体がエネルギーを欲します。つまり、さらに食欲が増すのです。そのため、月経前の食欲は甘いもので満たさないことが大切です。

また、ご飯やパンなどの炭水化物を空腹時に食べたり、大量に食べたりすることも血糖値の急上昇を起こします。そのため、主食を食べるときには、先に野菜などの食物繊維が豊富な食材を食べて量を控えめにすることが大切です。

こうした対策を行うことで、月経前の食欲増加を防ぎます。少し工夫をするだけで、体重増加を抑制することが可能なのです。