女性の貧血:鉄不足とイライラなど精神症状の関係性

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貧血は女性に身近な病気です。貧血の多くは、体内の鉄が不足することによって起こります。人体では、使用された鉄のほとんどが再利用されます。そのため、男性は出血した場合を除いて鉄が不足することは少ないです。

一方で、女性は月経による出血で定期的に鉄が失われるため、慢性的に鉄が不足しやすいです。そのため、男性よりも女性のほうが貧血になりやすいです。

鉄不足があると、身体に頭痛や疲労感などのさまざまな不調が起こりやすくなります。ただ、これらの症状があっても、鉄不足が原因であると自覚している人は少ないです。特に、イライラや落ち込みなどの精神症状が鉄不足と関係あることは、あまり知られていません。

そこでここでは、このような精神症状と鉄不足の関係性について解説し、鉄の効率的な摂取方法について述べていきます。

鉄不足と精神症状の関係性

人間には、さまざまな感情が起こります。これら感情の発生に深く関わっているのが、脳内の神経伝達物質です。神経伝達物質とは、神経細胞同士が情報を交換するために分泌される物質のことです。これによって体内の情報伝達が起こり、人間のさまざまな活動が行われています。

脳内で働いている神経伝達物質には「セロトニン」や「ノルアドレナリン」、「γアミノ酪酸(ギャバ)」などがあります。これらはどれも、タンパク質を原料にさまざまな成分の力を借りて作られます。

神経伝達物質が作られる過程は、セロトニンなどの「抑制系」、ノルアドレナリンなどの「興奮系」、γアミノ酪酸などの「調整系」の3つにわけられます。このうち、前述のような精神症状と特に関係が深いのは、抑制系と興奮系です。

この2つの過程で神経伝達物質が作られるとき、鉄が消費されます。

つまり、鉄が不足しているとセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質がうまく作られないのです。脳内にノルアドレナリンなどの興奮物質が不足すると、意欲が低下したり気分が塞ぎやすくなったりします。これら神経伝達物質の不足は、うつ病の原因になるといわれています。

セロトニンが不足すると、気分が落ち込みやすくなるなどのうつ症状が出やすくなります。また、セロトニンにはノルアドレナリンなどの暴走を抑える働きがあります。そのため、セロトニンが不足すると、興奮物質の過剰によってイライラなどの症状が出やすくなります。

さらに、セロトニンは睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の材料になります。セロトニン減少によってメラトニンが不足すると、眠れなくなったり睡眠の質が下がったりします。

睡眠障害が起こると、身体の疲労が取れにくくなります。身体が疲れているときには、無気力やイライラなどの症状が起こりやすくなります。

このように、鉄が不足すると脳内の神経伝達物質がうまく作られないため、イライラや落ち込みなどの精神症状が出やすくなるのです。

イライラや落ち込み防止のための鉄補給

鉄は吸収しづらい栄養素であり、通常の食事から摂取した鉄は、1割程度しか吸収されないといわれています。そのため、鉄不足防止のためには効率よく鉄を利用できる食生活を行うことが大切です。鉄には、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」と動物性食品に含まれる「ヘム鉄」の2種類があります。

非ヘム鉄は、吸収されるまでの過程が長いため吸収率が低く、摂取した鉄の約2~20%ほどしか吸収されません。

一方で、ヘム鉄はそのままの形で吸収できるため、摂取した鉄の約15~35%が吸収されます。さらに、食肉に含まれているタンパク質には鉄の吸収を促進する働きがあります。そのため、鉄補給は食肉の摂取で行うのが効率的です。

また、鉄と一緒にビタミンCを摂ることで鉄の吸収率を上げることもできます。ビタミンCは、野菜や果物に多く含まれています。

ただ、ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、調理の過程で失われやすい栄養素です。そのため、鉄補給のためには、野菜や果物を生で食べることが有効です。

このように、鉄の吸収を高める栄養素がある一方で、吸収を妨げる成分もあります。特に、コーヒーやお茶などに含まれている「タンニン」は、鉄と結合して吸収を妨げる働きがあります。

コーヒーやお茶は、常飲されることが多く、これらによって水分補給を行う人も少なくありません。ただ、こうした嗜好品を常飲していると鉄がうまく吸収されず、鉄不足が起きやすくなります。

前述のように、女性は鉄が不足しやすいです。そのため、効率のいい鉄補給を日常的に行う必要があります。鉄不足による精神症状が起こることを防ぐために、これまでに挙げたポイントに注意しながらバランスの良い食事を心がけましょう。