体を温める運動療法を生活に取りいれ、冷え症状を予防する

体が冷えていると、運動したくなくなってしまうものです。しかし、運動不足はかえって冷えを招いてしまいます。運動不足は筋肉量が減り、全身の体温のうち「筋肉が作り出している体温40%」が作れなくなってしまうからです。

私は自己免疫疾患になって冷えに苦しむようになりましたが、それ以前は、この事実を知りませんでした。運動が嫌いだったので筋肉量は少なく、体温も低く、いつも36℃あるかないかでした。アトピーもあって体はいつも湿疹ができていたし、全身がだるくて仕方がなかったものです。

体が冷えるとがんやアレルギーなどの原因となってしまいますので、それらを避けるためにも筋力を上げておきたいものです。

それでは、健康を維持し、体温を作る筋力を鍛えるためにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは、筋肉を鍛えて体温を作り出すのに効果的な運動療法を紹介します。

体温は、主に下半身の筋肉から作られる

人間の体温は、40%が筋肉で作り出されます。筋肉量が増えるほど、体温を作り出す能力は高くなります。そして、筋肉は70%が下半身に集中しています。

そのため、体温を維持するためには、温かい食べ物を食べたり、温熱療法を行ったりするだけでなく、下半身の筋肉をトレーニングしておくことが大切なのです。

筋肉を鍛えておかないとどうなるの?

筋肉を鍛えておかないと、体温を作る力が不足することになります。全身の筋肉の70%が下半身に集中しているため、特に下半身の筋肉が衰えると全身の血行が悪くなります。

血行が悪いと酸素がうまく全身に届かないため、酸欠状態となります。酸欠状態で筋肉に負担がかかることで、脂肪、糖、などの体内栄養物や、尿酸をはじめとするさまざまな老廃物が燃焼できずに体内にとどまり続けます。そうして、がんや自己免疫疾患、アレルギーなどの病気を引き起こしやすくなります。

筋肉が酸欠状態のままで負担がかかり、筋肉に痛みや疲労があると運動神経は興奮したままになり、筋肉に対して収縮するように命令を出し続けてしまいます。そして、筋肉は収縮し続けた結果、周囲の血管が圧迫され、血液の流れが悪くなります。

そこに体が冷やされると、筋肉が固くなり、体のあちこちにコリができて血行不良となります。血行不良があると、「基礎代謝によって温められた血液の熱」が全身に届く前に血液が冷えるため、体温が上がらずに冷えてしまいます。さらに老廃物を蓄積してしまうと、がんやアレルギー、膠原(こうげん)病などの病気を引き起こしやすくなります。

特に女性の場合、下半身が冷えると子宮・卵巣に栄養や酸素、そして免疫物質が届きにくくなるため、子宮や卵巣の働きが悪くなり、結果として生理痛、生理不順になりやすいです。

また、運動量が減って足の筋肉に付く脂肪が増えると、心機能、筋力が低下し、そのほか尿に排せつされるカルシウム量が増え、骨が弱くなってしまいます。

これらの症状を防ぐためにも、下半身の筋力を鍛えておくことが大切なのです。

足の筋肉は第二の心臓とも呼ばれる

また、足は第二の心臓ともいわれます。血液は心臓から全身に送り出され、また心臓に戻ってきます。上半身のでは心臓に血液を楽に戻せますが、下半身の血液を戻す際には重力の影響が生じ、心臓の力だけで血液を戻すとなると、かなりの負担になってしまいます。

そのため、下半身には心臓の助けとなるように足の筋肉を動かすミルキングアクションという機能があります。ミルキングアクションとは、足の筋肉が血液の周りで伸び縮みをする動きのことです。

例えば、足の筋肉に力を入れると、それと同時に血管が圧迫されて血液は上に押し上げられます。次に、先ほど入れていた足の筋肉を弱めると圧迫されていた血管はゆるみ、血液が入ってくるようになります。これは、心臓が縮んだり拡大したりして血液を送り出しているのと同じです。

下半身の血液は、下半身の筋肉の助けを借りることで、下半身の血液が心臓に送り返しているのです。

ただ、下半身の筋力がなければ、こうした筋肉によるポンプ機能は働きません。心臓の負担を減らすためにも、下半身の筋力トレーニングを実践しましょう。

筋力トレーニングの方法

筋肉を鍛えておくことの重要性が理解できたら、実際に下半身の筋力トレーニングをしてみましょう。

過去に運動の習慣がなかった人は、急に運動をすると体が追いついていきません。そのためけがをしやすくなったり、疲労をためてしまったりして運動が続けられないことが多いものです。

運動が継続できるよう、日々の生活の中で簡単にできるものを紹介します。

手軽にできるウォーキング

運動習慣がなかった人にお勧めなのが、手軽にできるウォーキングです。特別な用具は必要ないし、わざわざ専用の服装に着替える必要もありません。

ウォーキングは、最低でも20分以上続けることで脂肪が燃焼されます。体力に自信のない方は、1日1回、片道10分で家まで帰れるような短い距離を歩くだけでも良いです。

私は高校1年生のときにステロイドの副作用で骨粗しょう症となり、背骨を圧迫骨折したことがあります。骨折した箇所は大変痛く、半年ほど寝たきり生活を送りました。

寝たきり生活の間、足の筋肉はどんどんやせ細っていき、足が冷えて仕方がなかったのを覚えています。

その後、リハビリとしてウォーキングを取り入れました。すると、1年後には1時間連続で歩いても疲れなくなりました。また、筋肉量が増えて体温を作り出せるようになったことで、汗をかくこともできるようになりました。

ウォーキングが面倒なときに行う方法

運動をすることに抵抗がある方は、ウォーキングだけのために外出することは面倒です。そういった場合は、運動に重きを置くのではなく、「ちょっと近くまで買い物に行く」「景色を楽しんでくる」といった別の目的をもって出掛けると良いでしょう。

誰かと一緒に外出するのも良い方法です。他人と楽しい時間を共有することもでき、一石二鳥です。

実際、私は何か目的がないのにウォーキングだけをしに行くことはできませんでした。そこで、母親と一緒に買い物に行くことでウォーキングも同時に行いました。

ウォーキング以外の目的をもって外出することは、筋力トレーニングにとても効果がありました。入院から1年後には以前の筋力に戻ったのです。これは、運動を意識することなくできたことが成功の要因だと思います。

サイクリングなら、ウォーキングより負担が少ない

自転車に乗れるようであれば、ゆったりと近所をサイクリングするのも効果的です。

ウォーキングでは自分の足で体を支えないといけないため、体への負担が大きくなります。しかし、サイクリングならサドルやハンドルによって体を支えることができるので、体への負担が少なくなります。そのため、筋肉量が少ない方でも楽にトレーニングができるのです。

サイクリングには、有酸素運動の効果があります。また、下半身の筋肉のうち、歩くときとは違った場所を大きく動かすことができます。体の負担を減らしつつ、下半身を鍛えたいときに良いでしょう。

トレーニングを行う際には、どんな自転車に乗っても構いません。ママチャリでも、十分に効果が得られます。

自転車を使えば、遠くまで楽に外出することも可能です。ちょっとした小旅行気分でトレーニングすることが、継続できるようにするためのポイントです。

実際に、私はサイクリングを通して筋力トレーニングを現在も行っております。景色を楽しみながらトレーニングができるので、運動が苦手な私でも継続できました。

よくいろんな方に「冬場に自転車で出掛けるのは、かえって体を冷やすのでは?」と聞かれることがあります。しかし、筋肉量が増えてくるにしたがって、寒さはそれほどつらくなくなるものです。

実際、私は冬にスーパーなどで買い物していると暖房が暑く感じられるほどになりました。自宅の暖房を弱くしても問題なくなるため、筋力トレーニングは節電にもつながったのです。

いつでも、どこでもできるスクワット

スクワットとは、真っすぐに立った状態からしゃがんだり立ったりを何度も行う運動のことです。このスクワットは下半身の、特に太ももやおしりの筋力アップに効果があります。

狭い場所で下半身の多くの筋肉を一度に鍛える運動としては、スクワットが最も効率良くできる方法です。

このスクワットの利点は、道具や音楽が不要なことと、立ったりしゃがんだりすることができる場所があればいつでもどこでもできることです。

例えば、お勤め先のトイレでやってもいいし、お休み前にベッドサイドでやっても良いでしょう。お天気が悪くてもお部屋の中でできます。外出する機会が少ない方には、ウォーキングやサイクリングよりスクワットのほうがやりやすいかもしれません。

転倒予防にもなる開脚交互屈伸運動

開脚交互屈伸運動とは、片脚を曲げながらもう片方の脚を伸ばす運動のことです。

この運動は、冷え性に効果があるツボの一つ、築賓(ちくひん)を刺激して、体を温めることができます。築賓は、足のふくらはぎの内側にあるツボです。また、階段を上るときの筋肉を鍛えることができるため、転倒予防にもなります。

外出先で転ぶことが心配な方は、まずはこの開脚交互屈伸運動から始めるのも一つの方法でしょう。

運動する時間が確保できない方に

ただ、なかなか時間の確保が難しい人もいると思います。そこで、今までに挙げた運動をするだけの時間が確保できない方向けのトレーニング方法をご紹介します。

家事は立派なトレーニングになる

わざわざ運動をすることなく、家事をしながら筋力トレーニングすることができます。雑巾掛け、窓拭き、つま先立ちでの料理、お庭の手入れなどです。これらは、生活の動きの中で自然とトレーニングができるので、忙しい方にはぴったりです。

砂嚢(さのう)を使って、外出と同時にトレーニング

砂嚢とは、袋に砂を入れたおもりのことです。足に砂嚢を着けたまま歩くことで砂嚢の重さによる刺激が加わり、砂嚢がないときよりもより筋肉を使うことになります。

普通に歩くより、下半身の筋肉を鍛えることができるのです。わざわざ運動する時間を作らなくても良いので、散歩・通勤のときに歩くだけで、下半身の筋肉をトレーニングすることができます。

私は通勤時に砂嚢を足にくくりつけ、足の筋力トレーニングをしていたことがあります。足に負担がかかり過ぎないよう、1個250gの砂嚢を左右の足に着けていました。これなら普通に通勤するだけでいいので、運動が嫌いでずぼらな私でも続けてやることができました。

女性の場合、砂嚢を付けて外に出るときにスカートをはくのは見た目に良くないと思います。そこで、このトレーニング方法を行うときはパンツスタイルにし、砂嚢が外から見えないようにしておくことが、誰にも知られずに自然にトレーニングできるポイントです。

運動する際の注意点

どのような内容の運動をすれば良いかを理解できたら、次は、どのようなことに注意すれば良いかをご紹介します。

どのように運動すれば良いか

ゆっくりと体を動かすほうが、脂肪を運動エネルギーに効率良く転換でき、脂肪を燃やすための酸素を大量に体内に供給することができます。

急激に運動量を増やすことは、「関節を痛める」「運動量のわりに疲労が取れない」ことの原因になります。そのため、ゆったりと運動し、体を大切にしながらトレーニングするようにしましょう。

どのぐらい運動すればいいのか

適度な運動量とは、2~3時間で疲れが取れる程度が目安です。24時間たっても疲れがある場合、運動することによって疲労をためてしまうので、体にとって逆効果となります。

翌日も疲れが残ってしまったら、次回からは2分の1から3分の2の運動量にし、疲労をためないことが大切です。何ごとも、行い過ぎてはいけません。

どんな運動でも、向上心が強く頑張り屋さんが行うとオーバートレーニングになりやすいです。頑張り屋さんはのんびりすることが苦手なため、のんびり屋さんより2倍以上急死しやすいといわれています。例えばプロの運動選手は頑張る人が多いので、寿命が平均より10年短くなるそうです。

今日は疲れてやりたくないと思ったら、トレーニングは無理せずにゆったりのんびりするようにしましょう。きついトレーニングを行って体を壊すのではなく、体調を維持しながら長く続けることが大事なのです。

運動ができなかった日も「私は頑張っているんだから、今日はお休みしよう。明日からはまたやろう」と自分に言い聞かせたり、運動できない自分を責めたりしない心がけも必要です。

下半身の筋肉を鍛えた場合の効果

下半身を鍛えると、冷えの解消のほかに、次のような効果があります。

高血圧、脳卒中、心臓病の予防

下半身の筋肉に毛細血管が増えて、血液が下半身に多くなります。そして上半身の血圧が下がります。脳血管への負担が減るため、高血圧や脳卒中が予防できます。

また、足の筋肉によるミルキングアクションで心臓の働きが助けられるため、心臓の負担が減って心臓病のリスクが下がります。

骨粗しょう症の予防、改善

歩くことで骨や筋肉が刺激され、骨の形成を促します。骨や筋肉は、運動による刺激がないと丈夫になりません。運動をしなければ、筋肉はやせ細って転倒しやすくなります。また、骨はスカスカになって、骨折しやすくなるのです。

このような症状を防ぐには、運動による刺激を与え続けることが必要なのです。

糖尿病、高脂血症、脂肪肝、肥満の予防、改善

体を動かすことによって、糖が消費されます。また、ウォーキングは有酸素運動であるため、血液によって運ばれる酸素の量が増えることで、脂肪が多く燃焼されるようになります。特に内臓脂肪が減って糖尿病、高脂血症、脂肪肝、肥満の予防、改善ができるのです。

特に私の場合、自己免疫疾患を患っていたのでステロイドを使用しており、この副作用として糖尿病や高脂血症、そして中心性肥満がありました。そこで、なるべく下半身を鍛えた結果、これらの病気を防ぐことができました。

ストレス解消

脳には、本能をつかさどる大脳辺縁系と、理性をつかさどる大脳新皮質があります。

大脳辺縁系は食欲や睡眠などの欲求を満たしたいと考えていますが、本能のおもむくままに行動するのでは人間社会を維持していくことはできません。大脳新皮質が有する「モラル」「責任感」「正義感」「向上心」をもって行動することが必要不可欠なのです。

そのため、大脳新皮質は大脳辺縁系がもっている生々しい感情(本能)をコントロールしています。人間の脳内ではつらいことから逃げようとする本能と、それを抑えようとする理性が戦っており、それがストレスとなります。

このストレスを解消するのに、ウォーキングは有効です。人間は動物なので、体を動かすことで本能的に生き生きとします。また、歩いている間に見える自然の風景が疲れた脳を癒やしてくれます。そして、大脳新皮質と大脳辺縁系が上手に協働できるようになり、ストレスが解消されるのです。

認知症予防

脳の酸欠状態が続くと、あくびが出たり、やる気や集中力が続かなったりして、結果として認知症を招いてしまいます。

ウォーキングは有酸素運動であるため、脳へ多くの酸素が運ばれるようになります。そのため、知的作業能力もアップし、ひいては認知症を予防する効果が期待できるのです。

まとめ

運動をすることにより、体温を作るための筋肉量を上げて冷えを防ぐことができます。それだけでなく、心臓病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病予防や、ストレス解消にもつながり、ひいては認知症までも予防することができます。

体を温めるためでなく、ほかの症状も予防するためにも、運動療法を継続していくことが大切です。

自分ができそうなものからで良いので、少しずつ生活に運動を取り入れることで体が温まり、体調を良くして人生を豊かにすることができます。