女性のうつ病:妊娠・出産とマタニティーブルー、産後うつ病

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うつ病は気分の落ち込み、焦燥感などの精神症状や腹痛、肩こり、腰痛などの体の症状を起こす病気です。うつ病は世界的に見て、男性に比べて女性に多いことが知られています。

女性にうつ病が多い原因として、女性ホルモンの乱れが考えられています。特にエストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンが関わっていると言われています。

エストロゲンは意欲を改善したり、気分を落ち着かせたり、気持ちを安定させたりします。また、プロゲステロンは気分の落ち込みや情緒不安定、イライラさせるなどの作用がある女性ホルモンです。

特に妊娠や出産によって女性ホルモンは大きく乱れます。そのため、妊娠中にうつ病になったり、マタニティーブルーや産後うつ病になったりする方が多いのです。気持ちがコントロールできず、子育てや夫婦生活に自信をなくしてしまい、「ダメな母親」だと考えてしまうことがあります。

ここでは、妊娠や出産によって起こるうつ病の症状と原因について説明します。女性や周囲の人間が、うつ病の原因と症状を理解することで、早期の治療につなげることができます。また、早期に治療することで重症なうつ病に進行するのを防ぐことができます。

妊娠期のうつ病

妊娠期のうつ病の症状の特徴としては、精神的に不安定になりやすいということがあげられます。その場合、自分や将来に対して悲観的な考え方になる傾向にあります。例えば、「将来子育てが出来るのだろうか?」、「お腹の赤ちゃんは私のことを愛してくれるのか?」、「障害がある子供が生まれてきたらどうしよう?」といった不安感に襲われることかあります。また、睡眠障害や食欲不振などの身体的な症状が現れる場合もあります。

国立精神・神経センターの精神保健研究所によると、妊娠初期で31%、妊娠中期に12%、妊娠後期の14%の妊婦がうつ病だったと報告しています。全体を通してみるとおよそ2人に1人がうつ病を経験していることになります。

妊娠期のうつ病の原因は「環境要因」と「ホルモンバランスの乱れ」の両方が関与していると考えられています。つまり、「家族が妊娠を応援してくれない」、「希望した妊娠ではない」、「夫との関係がうまくいっていない」などの環境要因が考えられます。

そのため、周囲の人は妊娠するとホルモンバランスが崩れやすく、うつ病になりやすいのだと認識して、妊婦と接する必要があります。

また、喫煙をしていたり、つわりが重症だったりすることなどもリスクファクターになります。妊娠中は周囲の人も喫煙を避け、つわりがひどい場合は周りが生活のサポートをしてあげてください。妊婦がうつ病になるリスクが高い状態だと認識して行動することがとても大切です。

マタニティーブルー

産後すぐにおこる気分の落ち込みや情緒不安定などの精神症状のことをマタニティーブルーと呼びます。具体的には、焦燥感や睡眠障害、食欲不振、疲労感、頭痛などの症状が起こります。

マタニティーブルーの原因は、「女性ホルモンバランスが、出産によって大幅に減少することによるのだ」と言われています。

エストロゲンやプロゲステロンは妊娠中に体内の量が増えますが、出産によって大幅に減ります。また、プロラクチンと呼ばれる女性ホルモンも同様に妊娠中に増えて、出産によって減少します。

プロラクチンの感情に対する作用は明らかにされていませんが、母乳を作ったり、睡眠を誘導したりする作用があります。また、母性行動を誘導する作用も報告されているため、脳に作用すると考えられています。そのため、うつ症状に関係すると考えられています。

日本産婦人科学会では、「産後1週間から10日以内に症状が現れ、2~4日が症状のピークになる」と報告されています。また、「マタニティーブルーの発生頻度は約30%で、3人に1人が経験する」と報告されています。ただし、通常は治療をしなくてもこれらの症状は完全に消失するため、病気としてではなく「現象」として扱うとしています。

一方で、国立精神・神経センターの精神保健研究所は「産後5日目の妊婦の8%がうつ病だった」と報告しています。そのため、マタニティーブルーの症状が現れて数日たっても良くならない場合は産後うつ病を疑う必要があります。

産後うつ病

産後うつ病は、産後一ヶ月以内に観察されるうつ病のことです。妊娠、出産に関連しないうつ病と同じように意欲の減退、情緒不安定、睡眠障害、食欲不振、疲労感、頭痛などの症状があらわれます。マタニティーブルーと違って、治療をしないと治らない重症なうつ病です。

また、マタニティーブルーから産後うつ病に進行する場合が多いため、注意する必要があります。

産後うつ病はマタニティーブルーで説明した「ホルモンバランスの乱れ」に加えて、「未来や環境に対する不安」が大きく関係しています。

例えば育児に対する不安や家事への不満、子供の健康への過剰な心配、母親としての自信が無いなどです。これらは、ほとんどの女性が抱える問題であるため、周囲の人間が見逃してしまう危険性があります。

国立精神・神経センターの精神保健研究所は「産後1ヶ月後に12%、産後6ヶ月後に17%、産後12ヶ月後に14%がうつ病だった」と報告しています。日本産婦人科学会でも、「妊娠・産後に訴えがある精神疾患の半分が産後うつ病だ」としています。

このように妊娠や出産によってうつ病になることは珍しくありません。うつ病が重症化することを防ぐためにも、早めに治療することが重要です。そうすることで、自信をもって出産や子育てを行うことができます。