月経周期とうつ症状:月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)

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うつ病は慢性的な気分の落ち込みや意欲の低下、イライラなどが起こる病気です。また、頭痛や肩こり、腰痛などの体の症状も起こすことがあります。

日本ではうつ病の患者さんの人数は男性に比べて女性のほうが2倍と多く、女性のほうがなりやすい病気といえます。女性のほうがうつ病になりやすい原因はたくさん考えられますが、特に女性ホルモンが関係していると考えられています。

一方で、うつ病ではないのですが、月経前に気分の落ち込み、意欲低下、イライラ、腰痛や腹痛などのうつ病によく似た症状が起きることがあります。これらの症状は月経前症候群(PMS)月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれます。

PMSやPMDDによって起こる気分障害や体の症状が続くと、それが原因でうつ病になってしまう可能性があります。

PMSやPMDDは月経周期での女性ホルモンバランスの乱れが原因で起こります。ここでは、PMSやPMDDの原因、そして治療法について説明します。これらを理解することで、うつ病への進行や重症化を防ぐことが期待できます。

月経前症候群(PMS)の原因

PMSでは腰痛、腹痛、イライラ、乳房痛、むくみなどの症状が起こりますが、月経周期は卵胞期、排卵期、黄体期、生理のサイクルを約28日で回ります。PMSでは黄体期にあたる生理前の数日~10日前に症状が出る病気です。

一方で、女性ホルモンの一種であるエストロゲンやプロゲステロンは月経周期によって変動します。
エストロゲンは気分を落ち着かせたり、意欲を高めたりする作用があります。また、プロゲステロンは気分の落ち込みや情緒不安定、イライラなどを引き起こす作用があります。

卵胞期や排卵期では気分を落ち着かせる作用のあるエストロゲン量が多く、イライラを引き起こすプロゲステロンの量が少ないです。しかし、生理前の黄体期になるとプロゲステロンの量が増えて、エストロゲンの量は減少します。そのため、健康な女性でも、生理前の黄体期ではプロゲステロンの影響でイライラして気分が落ち込み、情緒不安定になる傾向にあります。

PMSでは、生理がはじまると症状が次第に軽減していきます。そのため、症状が軽い場合は治療する必要がなく、健康に生活することができます。しかし、生活に支障をきたすような強い症状が出ている場合には治療をする必要があります。

このようにPMSはプロゲステロンとエストロゲンのホルモンバランスが崩れることによって引き起こされると考えられています。ただし、女性ホルモンを補充する治療をしても症状が改善しない人もいるため、他にも原因があると考えられています。

月経前不快気分障害(PMDD)とPMSの違い

PMDDは1年以上にわたって起こる、月経前の重い精神症状(イライラ、気分の落ち込み、憂鬱、不安感など)によって、生活や仕事に支障を及ぼすような状態のことを言います。

月経前に起こる病気であるため、長期にわたって起こるひどい精神症状を特徴とするPMSと言えます。また、PMSと同様に腰痛や腹痛、乳房痛などの身体症状も起こるつらい病気です。

うつ病と似た症状がおこりますが、生理がはじまると症状が軽くなる点が違うポイントです。また、閉経すると起こらなくなるため、月経周期によっておこる女性ホルモンのバランスが崩れることが原因だといえます。また、PMDDを治療せずにいると、精神的、身体的症状の悪化によって、うつ病を発症する可能性があります。

PMSとPMDDの治療法

まずは、PMSやPMDDの症状を抑える治療についてです。腰痛や腹痛などの痛みには鎮痛剤が処方されます。また、気分の落ち込みや不安感には、抗うつ薬や抗不安薬などの薬が出されます。次にホルモンバランスの乱れを改善するために、低用量ピルを飲んで治療を行います。

低用量ピルは一定量のエストロゲンやプロゲステロンと類似した薬を単独もしくは組み合わせて飲む薬です。一方でPMSやPMDDの患者さんの女性ホルモンのバランスは人それぞれです。そのため、患者さんのホルモンバランスにあった低用量ピルを見つけることは、専門家でないと困難です。

また、低用量ピルは悪心や嘔吐などの消化器系の副作用が起こる可能性があります。一方、血液を固める副作用が起きる可能性もあり、血栓による脳梗塞、心筋梗塞などのリスクを伴う薬といえます。

他にも漢方薬による治療も行われています。当帰芍薬散や加味逍遥散、温経湯などの漢方処方がよく用いられています。

漢方の知識を持った専門医や薬剤師に相談し、自分の体格、体質、症状にあった漢方薬を服用することで、PMSやPMDDの症状が改善する場合があります。また、低用量ピルなどの西洋医学的な治療と組み合わせることで、相乗効果も期待できます。

このように、PMSやPMDDは女性ホルモンのバランスが崩れることが原因だと考えられています。しかし、その治療は症状を改善する治療が中心です。そして薬を使った治療では、高度な専門的知識が求められます。

腰痛や腹痛、イライラ、気持ちの落ち込み、不安感などの症状を治療しないでおくと、うつ病に発展してしまう可能性があります。そのため、ただの生理前のイライラだからと見逃すのではなく、積極的に対処していくことが重要です。