セロトニンなどの脳内神経伝達物質とうつ病の関係

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体の機能を調整するとき、体内で作られる物質と受け皿である受容体を使ってやりとりをします。受容体とは、体内物質が作用するためのスイッチだと考えてください。

例えば、寒いところに行くと体温が下がります。すると、甲状腺ホルモンが体の中で作られ、甲状腺ホルモンは受容体に作用します。こうして、体をあたためる働きをします。また、怪我するとヒスタミンなどの炎症性物質が放出されます。放出されたヒスタミンは神経に存在するヒスタミン受容体に作用して、痛みを脳に伝えます。

これが人の脳の中では、神経伝達物質とよばれる物質を活用します。ストレスや気分の高揚を感じると神経伝達物質が放出されます。放出された神経伝達物質は受容体に作用し、脳の働きを調整します。

セロトニンは神経伝達物質の1つです。ただ、うつ病患者ではセロトニンの働きが低下することがわかっています。ここでは、うつ病のことを理解するために、セロトニンの作用とうつ病の関係について説明します。

セロトニンの作用

セロトニンは脳中の血管を収縮させる物質として発見されました。また、脳以外のさまざまな場所に存在しています。セロトニンの分布を調べると90%は消化管、8%は血小板、残り2%は脳の中に存在することが分かっています。

消化管では腸の粘膜に存在し、腸の働きを良くします。腸の中でセロトニンが働き過ぎると下痢になりますし、働かないと便秘になります。また、血小板を集めて血栓を作る作用があります。

脳の中でもさまざまの場所に存在していて、多くの機能を持っています。例えば、セロトニンは覚醒状態や痛み、血圧、代謝、体温を調整することが分かっています。さらには、心の領域に働きかけて、意欲、心のバランスを調整しています。この作用がうつ病に関係するといわれています。

より具体的にいうと、うつ病では脳内のセロトニンの量が少なくなっています。これにより、意欲や心のバランスが崩れます。

そこで、うつ病の治療では脳の中のセロトニンの量を増やすことが重要です。薬による治療もセロトニンの量を増やすことで効果を発揮します。

一方で、消化管や血小板で作用すると、副作用が起きる可能性があります。また、脳内で期待しない作用が起こると重篤な副作用の原因にもなります。つまり、セロトニンを増やすことは意図しない副反応も起こすことを意味します。

脳内神経伝達物質とうつ病の関係

うつ病は脳の病気や性格が関係したり、ストレスで起こったりと原因は人によってさまざまです。一方で、うつ病患者の脳内神経伝達物質のバランスを見ると、似通った特徴があります。

神経伝達物質には「モノアミン」と呼ばれる種類があり、これはセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンのことを指します。

そして、脳内の情報伝達に関わるセロトニンやノルアドレナリン、ドパミンが不足するとうつ病を発症するといわれています。

ただし、「脳内でこれらモノアミンの量が多い、少ない」だけでは説明できないこともあります。例えば、 抗うつ薬を飲むと体内のモノアミン量が急激に上昇しますが、効果が現れるまでに2週間程度かかります。つまり、たとえ薬によって脳内のセロトニン量を増やしたとしても、すぐに改善効果が表れないのです。

そのため、単にモノアミンが存在するだけでは不十分だと考えられています。もっといえば、受容体(モノアミンが作用するための受け皿)の数もうつ病の発症に関与しているのではといわれています。

自殺をした人(うつ病の可能性が高い方)の脳の中では、セロトニンの受容体の数が多いことが報告されています。また、抗うつ薬を連続して服用すると、セロトニンの受容体やノルアドレナリンの受容体の数が減少することが分かっています。

このことから、うつ病ではモノアミンの受容体の数が増えて、脳の神経伝達機能が過剰になっている可能性があります。

一般的には、うつ病の症状を改善するためにはセロトニンなどのモノアミンの量を増やし、モノアミンを介した神経伝達機能を調整することが重要です。しかし、モノアミンを介した発症メカニズムでは説明がつかない点も多く、その他の物質との関係性についても研究が進められています。