心臓病とうつ病の関係性

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うつ病は単独でかかったとしても命にかかわる危険な病気です。一方で、ある種の病気とうつ病を併発するとお互いに悪影響を及ぼすことが知られています。例えば、心筋梗塞や狭心症、心不全などの心臓病はうつ病を引き起こす病気として知られています。

心臓病にかかった患者さんの約17%~27%がうつ病にかかることが分かっています。また、冠動脈疾患になるとうつ病になるリスクが2.8倍になるとの報告もあります。ここでは、心臓病の患者さんがうつ病になるメカニズムと治療の重要性、さらには治療法について説明します。

なぜ心臓病だとうつ病になりやすいのか?

心臓などの全身の臓器には圧受容器と呼ばれるセンサーがついています。センサーによって異常を感知すると、神経を介して脳に異常を伝える仕組みがあります。心臓病の患者さんでは心拍数の変動が起こったり、圧受容器自体の感受性が低下したりしているため、脳に異常な反応が伝わりやすくなっています。

また、心臓病の患者さんでは血管で動脈硬化が起こったり、血管の損傷が起こったりしています。血管に障害がでることによって、炎症反応が引き起こされています。一方で、全身の臓器は脳を中心として自律神経(呼吸器、循環器、発汗などの臓器や腺の働きを制御する神経)でコントロールされています。

炎症反応によって放出された炎症物質は自律神経に影響を与えます。結果として脳に影響を与え、うつ病を引き起こすと考えられています。

一方で、心臓病が運動不足につながることもうつ病になる原因の一つと考えられています。また、体がきつく、心臓病が悪化するのが怖いなどの理由で、外出が少なくなり、社会的に孤立することもうつ病を引きおこします。

詳細なメカニズムについては不明な点も多いですが、炎症反応や圧受容器を介した脳への影響や運動不足、社会的な孤立などのさまざまな要因が重なることで、心臓病はうつ病を引き起こすと考えられています。

うつ病が心臓病の症状を悪化させる

これまでは心臓病がうつ病を引き起こす理由について述べてきました。一方で、うつ病が原因で心臓病を悪化させることも分かっています。

大うつ病になると冠動脈疾患になるリスクが2.5倍になることが知られています。また、心臓病にうつ病が併発すると心臓病を再発したり、死亡したりする可能性が高くなるという報告が多くされています。

例えば、心筋梗塞やうっ血性心不全、不安定狭心症、冠動脈バイパス手術後とうつ病が併発すると死亡率がそれぞれ2.3倍(心筋梗塞)、1.8倍(うっ血性心不全)、3.3倍(不安定狭心症)、1.6倍(冠動脈バイパス手術)になると報告されています。このことから、心臓病を悪化させないためにうつ病の治療へ取り組むことがとても大切だと言えます。

心臓病と併発したうつ病の治療方法

それでは、効果が確認されている2つの治療方法について説明していきます。

一つ目は薬物療法です。抗うつ薬として初期に使われていた三環系抗うつ薬は心臓に負担があります。そのため、心臓病の患者さんはうつ病の治療が難しかったといえます。一方で、心臓に負担が少ない選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が開発されたため、心臓病患者さんのうつ病治療が進んできています。

ただし、心臓病の患者さんでは多くの薬を飲んでいる場合が多いです。SSRIは体の中の薬を処理する酵素(代謝酵素)の働きを邪魔する作用があります。そのため、心臓病の薬の効果に影響をあたえる場合があるので、薬の飲み合わせに注意する必要があります

二つ目はコラボレイティブケアと呼ばれる方法です。これは循環器医や精神科医、看護師が共同して行う医療行為です。具体的には、「うつ病の徹底的な探索」、「うつ症状に合わせた段階的な治療」です。また、基本的な考え方として「患者自身の選択」、「問題解決」があります。

コラボレイティブケアの考え方で最も重要なのが「うつ病の徹底的な探索」です。言い換えると、うつ病を見つけることが最も大切であるということです。初期段階でうつ病を見つけることができるとうつ病の症状が改善し、結果として心臓病の悪化も防ぐことができます。

心臓病と合併したうつ病を発見するときの注意点

うつ病で見られる頭痛、ほてり、肩こり、動悸、胃腸障害、痛みなどは心臓病でも見られる症状です。そのため、うつ病にかかっていることに気づくのが遅れてしまう場合があります。

そこで、悲しい、虚しい、泣きたいなどの「抑うつ症状」、物事への興味、関心がなくなる「興味の喪失」、無価値感、集中力の減退、自殺願望などの「脱力感と絶望感」などの精神症状に注意してください。

また、食欲減退、不眠、いらいら、疲れやすいなどの精神症状もうつ病にかかったときに出る症状です。これらの症状に気付いた場合には自分はうつ病かも知れないと考え、何らかの対策を取ることが重要です。

このように、心臓病の患者さんではうつ病にかかりやすくなります。また、うつ病は心臓病を悪化させ、死亡率を高くしてしまいます。うつ病に対する薬の開発も進んでいますが、何よりも大切なのは自らがうつ病かどうか気づくことです。早くうつ病に気づいて治療を行うことで、心臓病の悪化や死んでしまう可能性を低くすることができます。