事故後のはっきりしない原因は脳脊髄液にある:脳脊髄液減少症

f23d0e66cb5526ad2a5daeaa0d8f502d_s

以前から「髄液穿刺後に頭痛を生じる」などが知られていました。これは、脳脊髄液の減少によるものです。ただ、事故後のはっきりしない症状の原因も脳脊髄液の減少が原因ではないかといわれています。

この病態に関しては、医療従事者の中でも意見が分かれています。しかし、この病態に対して治療を行い、症状が改善している人がいるのも事実です。今回はこの脳脊髄液減少症について解説します。

脳脊髄液(髄液)とは

髄液は聞きなれない言葉かと思います。体液は血液、リンパ液、髄液の3つに分けられ、それぞれが相互に影響しながら機能しています。

その中でも髄液は、脳の脈絡叢(みゃくらくそう)とよばれる部分で作られます。ここで作られた髄液は、脳、脊髄、末梢神経の周りにあるくも膜下腔という空間を循環しています。ここで髄液が作られては、全身を循環し排泄されるということです。

この髄液は神経系を取り囲むことによって、主に2つ重要な役割を果たしています。

1つ目は、神経系を衝撃から保護する役割です。これは、売ってある豆腐を想像してもらえるとわかりやすいかと思います。豆腐が神経系でその周りにある水が髄液です。

豆腐は水の中に浮かぶことによって、外からの衝撃を強く受けないようになっています。もし、水に浮かばずにプラスチックのケースの中に入っているだけだと、ちょっとした衝撃で豆腐は崩れます。

こと同じように、神経系は髄液の中に浮かぶことによって外からの衝撃を受けないようになっています。

そして2つ目は、神経系に栄養を与える役割です。血液が細胞に酸素などを栄養に届けるように、髄液には神経に栄養を届ける働きがあります。そのため、髄液に何らかの問題が生じると、さまざまな神経系の症状が出現します。痺れや自律神経系の症状なども髄液の問題で生じることがあります。

脳脊髄液減少症とは

脳脊髄減少症とは、先ほど述べた髄液が何らかの原因で減少するために生じる疾患です。そして、交通事故後にもこのような状態になることがあります。交通事故では、その衝撃によって髄液を包む膜が損傷し、そこから髄液が漏れ出るために脳脊髄液が減少してしまうと考えられています。

そして、脳脊髄液が減少すると、先ほど述べた髄液の役割が十分に果たせないようになります。そのため神経系にさまざまな障害が起こり、頭痛や吐き気、聴力障害、視力障害、集中力低下など多彩な症状を呈するようになります。

また、この病気によって起こる症状は起立、頭部の揺れ、排便時のいきみなどによって増悪することが多いです。

以下にこの症状をまとめます。

・疼痛:頭痛、頚部痛
・脳神経症状:嗅覚・視覚障害、喉の違和感、耳鳴り
・自律神経症状:微熱、動悸、胃腸障害、発汗異常
・高次脳機能障害:集中力低下、睡眠障害
・その他:内分泌障害、全身倦怠感

治療

脳脊髄液減少症の検査は、髄液検査、MRI検査、脳槽造影検査の3つが代表的です。これらの検査によって、髄圧、髄液の成分、漏出部位などを特定します。

その治療法としては、保存療法が主になります。この病気で手術を行うケースは本当に稀です。保存療法では、安静と輸液を2~4週間行うことによって、ほとんどの人は症状が改善します。

その他にも、自分の血液を漏れ出た部位に注射し、漏出部位を閉鎖する「硬膜外自家血パッチ」とよばれる方法や、生理的食塩水を注入し、減少した分の髄液量を補うという方法もあります。後者の方法は治療直後から症状の軽減が見られることが多く、なおかつ安全性も高いです。

以上のように、交通事故後の不定愁訴(イライラなど)には脳脊髄液の減少が関係している可能性があります。しかし、この疾患はまだ診断も治療法も確立しておらず、どこの病院でも行えるというわけではありません。

そのため、もしこのような状態が認められる場合は、自らこの検査・治療が行える病院を探すか、今かかっている医者に紹介してもらう必要があります。