体内における酸・アルカリの調整のメカニズム

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健康ブームの中で、「体が酸化する」「酸化はよくないからアルカリ性のものをとった方が良い」など、酸・塩基(アルカリ) の話がよく出てきます。とくに酸化に関しては、老化やがんの原因の一つともいわれており、多くの人が悪いこととして捉えています。

しかし、体のエネルギーは食物などを酸化することによって得られます。つまり、酸化は体にとって必要な反応なのです。確かに酸化は体に悪影響を与えることは間違いありませんが、このように体にとって必要な反応でもあるのです。

現代の健康ブームは、このようにあるものの一面を捉えるだけで、それが良い悪いということを言います。そこで今回は、酸とアルカリについて中立的な立場から、体との関係性について解説します。

体内が酸・アルカリ性に傾く条件

通常、体内では酸とアルカリのバランスは厳格に調整されています。それは、このバランスがどちらかに傾いてしまうと、酸性に傾く「アシドーシス」やアルカリ性に傾く「アルカローシス」という命に関わる状態になってしまうためです。これらは呼吸や代謝によって調整されています。

では、体内で酸ができるときとはどのようなときでしょうか。例えば、激しい運動をした場合、筋肉に必要量の酸素が供給されなくなります。そうすると、乳酸が多量に生じ、その乳酸の蓄積によって血液は酸性に傾きます。

また、飢餓状態や糖尿病でインスリン不足の状態では、糖質の酸化分解が不十分となり、その結果、アセト酢酸のような酸性物質がつくられます。

さらに、喘息などで呼吸困難が続くと、血液中の炭酸濃度が高くなり、血液は酸性に傾きます。これは先ほど述べた呼吸の調整がうまくいかない場合です。

一方、腎臓がうまく働いていない場合も、通常では尿と一緒に出される酸性物質が排泄されず、血液中に溜まってしまうため、血液は酸性に傾きます。これは代謝がうまくいっていないために起こるものです。

また、メチオニンやシステインといった硫黄を含む食べ物やリン酸を含む食べ物を食べたときも、その消化の過程によって酸性物質を作り出します。

次にアルカリ性物質はどのようなときつくられるかを説明していきます。通常の食事をした場合、胃内ではその消化のために胃酸が分泌されます。その胃酸を作るために、血液中の水素イオンが減少するため、結果としてアルカリ性である水酸イオンが増加し、血液がアルカリ性に傾きます。

また、重曹やクエン酸が多く含まれる食べ物、中華そばなどに含まれるカンスイなどを摂取した場合も、体内環境はアルカリ性に傾きます。

さらに、深呼吸を過度に行うなど、呼吸が深くなったり、呼吸数が多くなったりすると血液中の炭酸が大量に失われるため、その分だけアルカリ性に傾きます。このような状態は「過呼吸」で生じる状態と同様です。

以上のように、さまざまな要因で体は酸性、アルカリ性に傾く可能性があります。

酸・アルカリの調整機構

それでは、体はそのようなことが起こるたびに酸性、アルカリ性に傾いているのでしょうか。冒頭でも述べたように、体内が酸性、アルカリ性に傾くと命に関わってきます。そのため、体内では主に3つの調整機能によって、体内環境が過剰に酸性やアルカリ性に傾かないように調整されています。

調整機能の一つ目が血液による調整です。実は、血液には弱酸性や弱アルカリ性である塩類やタンパク質などの物質が含まれています。

そのため、血液自体が酸とアルカリの微妙な調整を行っており、少し酸性物質やアルカリ性物質が加わったぐらいでは、血液のバランスが崩れることはないのです。この血液の調整によって、先ほど述べたような運動時の乳酸の増加などに対応しています。

二つ目が呼吸による調整です。例えば血液が酸性に傾くと、それを感知するセンサーが反応して、「息苦しい」という感覚を起こします。これによって呼吸数を増加させます。その結果、体内の酸性物質が呼吸によって体外に排出されるため、酸性に傾くことを防ぎます。先ほどの血液による調整はすぐに起こりますが、この呼吸による調整は数時間かけて完了します。

そして三つ目が腎臓による調整です。腎臓による調整はさらに時間がかかり、数日かけてゆっくりと調整が行われます。腎臓では尿が作られ、排泄されます。

尿は血液から作られます。ため、その血液中に過剰な酸性物質やアルカリ性物質が存在すると、その分を尿と一緒に排泄し、調整するというものです。

以上のように、体内を酸性、アルカリ性に傾かせる要因は数多くあり、通常の生活を行っていてもそのような反応が起こっていることがわかります。しかし、そのたびに体内が酸性やアルカリ性に傾いていては、命がいくつあっても足りません。

そこで、血液や呼吸、腎臓によって短期的、そして長期的に厳格にその調整が行われることによって、体内の酸・アルカリのバランスが保たれています。この調整は厳格であるため、よほどのことがない限り、体内のバランスが崩れることはありません。

そのため、食べ物などを過剰に意識して、「これは酸性食品だから食べない」などということを実行する必要はありません。