うつ病と睡眠:睡眠時間より大切なこと

うつ病と睡眠は深い関係にあります。うつ病の人の実に9割の人は睡眠に悩んでいると言われています。

多くの方が悩んでいる睡眠不足はうつ病の発生原因になり、悪化させる要因にもなります。一方で、ある種のうつ病ではどれだけ睡眠をとっても足りないと感じるのも症状ひとつです。同じうつ病の睡眠の悩みといっても人によってさまざまな悩みがあります。

ここでは、うつ病と睡眠の関係について考えみましょう。

睡眠とうつ病

睡眠は脳や体にたまった疲労をとり、身体的、精神的に体を安定させます。睡眠不足になると体に肩こり、頭痛、動悸、食欲不振、嘔気、腹満感、下痢・便秘などの不調が起こることがあります。精神的にもイライラ、不安、焦燥感、妄想、記憶障害などが現れることがあります。

睡眠不足が続き、体調の不調が続くとうつ病を引き起こす一因になってしまいます。それを確かめた調査があります。はじめはうつ病ではなかった人に対して、不眠が続くとうつ病を発症するかどうかを調べました。

調査に協力した健康的な人の10.2%が不眠で、残りの方は不眠ではありませんでした。1年後に再調査すると、はじめから1年後も不眠が続いていた人では、不眠で無かった人と比べて、うつ病の発生率が39.8倍でした。

つまり、睡眠不足が続くことによりうつ病になる確率が約40倍にも高くなることがわかったのです。

適切な睡眠時間

不眠がうつ病をまねくことはわかりました。それでは、睡眠の何を改善するとよいのでしょうか? まずは、適切な睡眠時間について考えてみましょう。

一般的に睡眠時間は7時間前後が良いといわれています。実際、睡眠時間について行った研究で、男女とも平均7時間程度が最も死亡率が低く,睡眠時間が7時間よりも短い人も長い人も死亡率が高くなる傾向を示すことがわかっています。

睡眠時間とうつ病についての研究では、日本の40歳から69歳までの方を対象とした調査があります。この調査で、睡眠時間が約6時間以下の人では約7時間以上の人に比べて、約2倍うつ病になりやすいことがわかりました。また、ストレスに関して高齢者の女性では8時間以上の睡眠をとるとストレスレベルは低く、男性では6~8時間の睡眠で比較的ストレスは少なかったとの報告があります。

これらのことから、うつ病の予防には6時間以上睡眠が重要である可能性が示されています。健康の意味でも可能であれば7時間睡眠をとり、上限に関しては8時間程度にした方が良いのではと予想されます。

睡眠の質

一方で、睡眠時間に関しては年齢や仕事、ライフスタイル、性別、地域により取れる時間に限界があります。「忙しくて睡眠が確保できないない」「眠りたくてもねれない」などの理由から、なかなか確保できないのが現状です。そこで、重要になってくるのが睡眠の質です。

ここで睡眠の質と睡眠時間が生活の質に対してどのような影響をあたえるかについて、日本の高齢者を対象とした研究を紹介します。

まず、睡眠時間について、「7~8時間を睡眠時間が良好な人」「それ以外の睡眠時間(7時間未満と8時間以上)の人」で生活の質を比べました。すると、睡眠時間は生活の質に影響を与えないとの結果が得られました。

一方で、「良く眠れると答えた人」は「時々眠れないもしくは眠れないと答えた人」に比べて生活の質が高いことがわかりました。具体的には主観的健康感、生活満足感、生きがい感、人間関係に対する満足感でよく眠れると答えた人の方が統計的に結果が良かったのです。

このことから、充実した健康的な生活をおくれるかどうかは、睡眠時間よりも睡眠がよくとれたと本人が実感しているかどうかが大切であるとわかります。

睡眠の質を上げるためには?

それでは睡眠の質を上げるためにはどうしたら良いのでしょうか。日本の看護系大学生を対象にして、睡眠の質への影響を与える要因は何か調べた研究があります。まずは睡眠時間に関してです。睡眠時間が長くなると「睡眠の長さへの満足感」は増しますが、「睡眠の質への満足感」については影響を与えませんでした。

一方で、最も「睡眠の質への満足感」に対して影響を与えた要因は、「就寝時間のばらつき」と「平均起床時間」でした。言い換えると、寝る時間がばらばらであると睡眠の質が下がり、起きる時間を統一すると睡眠の質があがることが明らかになりました。

このことから、睡眠の質を上げるためには睡眠時間の長さよりも「就床時間」と「起床時間」が影響することがわかりました。つまり、就寝時間と起床時間を安定させることで睡眠の質が良くなる可能性が示されたのです。

うつ病患者さんの睡眠に対する悩みはとても深いものです。適切な睡眠をとることによってうつ病が改善したり、症状が軽くなったりする可能性があります。

できるだけ、7時間前後の睡眠を取ることが大切です。ただ、睡眠時間の確保は忙しい現代人にとってなかなか難しいため、睡眠の質を上げることが重要です。就寝時間と起床時間を安定させることでうつ病の予防と改善に役立てましょう。