めまい・ふらつきの原因となる「乗り物酔い」のメカニズム

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めまいやふらつきは、健康な人にも起こる体の不調です。めまいやふらつきの原因となるものの中には、心臓や脳の病気といった「緊急の処置が必要である重篤なもの」もあります。その一方で、誰にでも生じる可能性がある「心配いらないめまい・ふらつき」もあります。

そして、そうした心配の必要がないめまい・ふらつきの原因のうち、その代表的なものとして「乗り物酔い」があります。

乗り物酔いは誰にでも起こる可能性があるものであり、それによってめまいが生じても特に心配する必要はありません。ただ、乗り物酔いは、起こる人もいれば全く感じない人もいます。

そのため、そうした乗り物酔いのメカニズムを学ぶことは、めまいやふらつきを深く理解することにつながります。

そこで今回は、「乗り物酔いのメカニズム」について解説します。

乗り物酔いとは

乗り物酔いとは、医学的には「動揺病」といわれるものです。乗り物酔いとは、車や船、飛行機などに乗っていると、胃に違和感を覚えたり、頭痛や眠気を感じたりするような症状のことを指します。

症状が強くなると、胃の不快感が増し、顔面蒼白や冷や汗などが出ることもあります。そして、最終的には嘔吐してしまうことも少なくありません。

また、こうした乗り物酔いには、めまいやふらつきを伴うことが多くあります。

ただ、乗り物酔いは、個人によって出現する症状の程度が大きく異なります。どれだけ長い間乗り物に乗っていても酔わない人もいれば、短時間でも乗り物酔いしてしまう人もいます。

そして乗り物酔いには、「繰り返し乗り物に乗ることで、慣れて酔いにくくなる」という特徴があります。そのため、同じような揺れを何回も経験することで、同じ揺れでは滅多に乗り物酔いをしなくなります。また、「運転していれば酔わない」ということも、乗り物酔いの特徴です。

こうした、さまざまな特徴を持つ乗り物酔いを理解することで、めまいの原因となりやすい「人間のバランス機能」について深く知ることができます。

乗り物酔いのメカニズム

乗り物酔いは、健康な人でも起こる生理的な反応です。乗り物良いが起こるのは、乗り物の揺れによって受動的なバランスの崩れが起こるためです。

人間の体は、自ら動いて起こる能動的なバランスの崩れには、体内のバランス機能が働くことで対応できます。フィギュアスケートの選手が、あれほど回転した後でもふらつくことなく演技を続けることができるのはそのためです。

また、運転手に乗り物酔いが起こらないのも、「運転手は能動的に乗り物を動かしている」ということが理由になります。

地震を想像してみると理解できると思いますが、自分でコントロールできない揺れは、転倒などにつながるため人間にとって非常に危険な状況です。そうした「危機的場面を避けるために出される危険信号」が乗り物酔いだといえます。

そのため、バランス機能が高く、車の揺れ程度では体が危険だと感じないような人は、乗り物酔いをしません。一方で、バランス能力が低い人の場合、車の揺れによって体が「転倒してしまう」という危険を察知します。

そしてそうした危機的状況に陥ると、体では「自律神経」のバランスが崩れます。自律神経とは、心臓や肺、胃腸、血管などの運動を無意識下にコントロールしている神経です。このように、自律神経は生命を維持するために欠かせない神経だといえます。

他動的な自分自身でコントロールできない揺れが加わると、体は生命の危険を感じます。そうなると、生命維持に関わる自律神経はパニック状態となります。

このように、自律神経のバランスが乱れた結果として、めまいや胃の不快感、冷や汗、眠気といったさまざまな乗り物酔いの症状が出現することになります。

以上のように、乗り物酔いでさまざまな症状が出現するのは、「自分自身でコントロールできない揺れに対して、危険を感じた自律神経がパニックを起こしている」というメカニズムが働いているためです。

乗り物酔いに「慣れ」が存在するのも、「繰り返しの刺激によってバランス機能が高まることで、危機感を感じなくなる」という理由から説明できます。

今回述べたように、乗り物酔いは、乗り物の揺れに対応できない体が、転倒などの危険を感じて発するサインだといえます。こうした乗り物酔いのメカニズムを知ることで、めまいに関わる人の平衡反応について、より深く理解することができるようになります。