頭痛を引き起こす原因として、緊張型頭痛や片頭痛はよく知られているものです。そして、緊張型頭痛や片頭痛であれば、適切な診断を受けて治療することで症状が落ち着くことがほとんどです。
ただ、中には緊張型頭痛や片頭痛と診断されて治療を受けているにも関わらず、頭痛が軽減しない人がいます。
そうした場合、医者の診断が間違っており、緊張型頭痛や片頭痛ではない可能性があります。そうなると、いくら治療を行っても、原因が異なっているため症状を改善することができません。
そうしたことを避けるためにも、緊張型頭痛や片頭痛とは違う頭痛についても理解しておく必要があります。
その中でも、「性行為」が原因で頭痛を生じる「良性性交時頭痛」があります。これは字の通り、性行為に伴って起こる頭痛です。良性性交時頭痛は、片頭痛とは異なるため、片頭痛に対する治療を行っても症状は変わりません。
そこで今回は、「良性性交時頭痛」について解説します。
良性性交時頭痛とは
良性性交時頭痛とは、性行為がきっかけになって起こる頭痛です。緊張型頭痛や片頭痛とは原因が異なるため、当然ながら治療方法も異なります。そして、良性性交時痛は「鈍痛型タイプ」と「激痛型タイプ」「体位型タイプ」の3つに分類されます。
以下に、それぞれのタイプについて解説します、
●鈍痛型タイプ
鈍痛型タイプは、良性性交時頭痛の中でも症状が軽いタイプです。
特徴としては、性交が始まったときから頭痛が起こり、行為が進んで興奮が高まるにつれて症状も強くなります。締め付けられるような痛みが、後頭部や頭全体に生じることが多いです。
鈍痛型タイプの頭痛は、性交時に頭や首周りの筋肉が過剰に緊張することが原因です。そのため、緊張型頭痛と同じようなメカニズムであるため、緊張型頭痛と同様に、筋肉を柔らかくするような薬による治療が主になります。
●激痛型タイプ
激痛型タイプは、オーガニズムに伴って激しい頭痛が起こるもので、良性性交時頭痛の70パーセント以上は、このタイプになります。
性交中でも、オーガニズムの前からオーガニズムにかけて、急に頭痛が生じます。症状の出方は片頭痛に似ており、心臓の拍動に合わせた拍動性の頭痛が起こります。
多くの場合、痛みは前頭部や後頭部の左右両方に出現します。ただ、人によっては側頭部や目の奥、頭部全体に起こる人もいます。また、痛みの持続時間は長くても1時間以内で治まることがほとんどです。
原因ははっきりしていませんが、脳血管の異常が影響していると考えられています。つまり、群発性頭痛と同じ原因であるとされています。
そのため、激痛型タイプに対する治療では、群発性頭痛と同じように、生活習慣を整えることが基本になります。あまりに症状が強い場合には、状況に応じて酸素吸入や注射などで痛みを軽減させるような対処を行うこともあります。
●体位型タイプ
体位型タイプは、姿勢によって頭痛が変化するものです。体を起こすと痛みが出現し、横になると症状が軽くなります。こうした症状が、2~3週間は繰り返し起こります。
ただ、良性性交時頭痛の中でも、体位型タイプは非常にまれなものであり、発症する人はかなり少ないです。
体位型タイプの良性性交時頭痛は、脳と脊髄が浸っている「髄液(ずいえき)」と呼ばれる液が少なくなることが原因だとされています。こうした状態は、「低髄圧症候群」といわれ、交通事故などで起こりやすい病態です。
激しい性行為を行った結果、髄液が入っている「硬膜(こうまく)」が破れてしまい、そこから髄液が漏れてしまいます。その結果、髄液量が少なくなり頭痛が生じます。
以上に上げた3つは、良性性交時頭痛の代表的なタイプです。またその他にも、腰のヘルニアやバイアグラなどが原因となって頭痛が生じる場合もあります。このように、良性性交時頭痛は、さまざまな要因で起こることを知っておいてください。
今回述べたように、片頭痛や緊張型頭痛と似たような症状でも、良性性交時頭痛のように、それらとは異なる病態である場合があります。そうした際には、片頭痛や緊張型頭痛に対して行われるような治療では、問題が解消されません。
そのため、こうした片頭痛や緊張型頭痛とは別の原因の可能性を知っておくことが大切です。